さすがフランス製といった感じのデザイン
ちなみに、『Wistiki by Starck』のソフトウェア開発の担当者であるボナズ・フィリップ氏は半国営の大手軍需企業から小規模なスタートアップに転職したというキャリアの持ち主。安定した大手の職から、敢えて小規模なスタートアップに飛び込むような転職は、フランスでは多いのだろうか?
「フランスは転職が盛んな国なんだ。新卒で入社した会社に定年までずっといるということは、民間企業で働くサラリーマンにとってはとても珍しい。同じ会社にとどまっていては、給料があがるということはほとんど無く、給料を上げるためには転職するというのが普通なんだよ。だから、フランス人は2~3年に一度のペースで転職をするんだよ。こんな具合なんで、自分のキャリアを評価してくれて、給料や労働条件でより良い条件を提示してくれる企業があれば、転職先はスタートアップでも大企業でもあまり関係ないのさ。もちろん、公務員は相当守られているので、あまり転職しないけどね。
フランスは、ご存じないかもしれないけど学歴主義が日本以上に激しい。だから、もしよい学校を出ていれば、一度スタートアップに転職してそのスタートアップがうまくいかなくても、次の転職にはあまり困らないということもあるね」
実際、そうした人材の流動性が高いせいか、フランスのスタートアップはかなり盛り上がっているという。
「フランスのスタートアップ事情は、かなり賑わっていると言えるね。『Parrot』(ドローンなどで知られる)や『Withings』(フィットネストラッカーやスマホ連動健康機器などで知られる)などのように日本でも大きな成功をおさめたところもある。それに、『blablacar』(同乗者を集めるサービス。例えば東京から名古屋に車で行くときに、後部座席が2席空いていたら、そこに乗りたい人を見つけて、同乗者から高速代金とガソリン代を乗車人数で割った程度の金額をもらう)などは。フランス国鉄の経営を脅かすほどの成功を収めているよ。あとは『Vente Privée』という卸売りサイトもかなり人気で、あっという間にECの主流になってしまった。その他には、デート相手を探すサイトやカンパを募るサイトなど、サービス系のスタートアップが勢力を広げているよ」
IoTやスタートアップというと、日本ではやはりシリコンバレーの印象が強いが、フランスもかなり盛り上がっている様子。Wistki社もまた、『Wistiki by Starck』でアジアのマーケットを席巻するフランス発スタートアップへと成長していくだろう。
製品を両手に持つ長男のブリュノ氏
Wistikiクラウドファンディングページ
https://motion-gallery.net/projects/wistiki
<取材・文/HBO取材班 写真提供/Wistiki>