「真田丸」に学ぶモチベーション・マネジメント

モチベーションエリアに応じたマネジメントが組織力を高める

 話をビジネスの現場に戻す。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの演習を積み重ねる中で、私はチームをまとめることに苦労し業績を上げることができないマネジャーには、共通の欠点があることが分かってきた。その欠点とは、メンバーのモチベーションエリアを見つけられず、モチベーションエリアに応じた方針や体制、コミュニケーションを繰り出せていないという点だ。  例えば、「公私の調和」にモチベーションエリアがあるメンバーに対して、マネジャーが「売上増大のために徹夜してでもやり遂げろ!」といっても、メンバーのモチベーションが上がるどころか、逆効果となる。他方、「目標達成」にモチベーションエリアがあり、残業してでも超過達成したい意欲満々のメンバーに対して、「今は努力しても無駄だから、ゆっくり休んで、ほどほどにやろう」などと「公私の調和」を進めても反発が生じてしまう。 ・マネジャーがメンバーをまとめられない ・世代間の格差がある ・チームとチームが対立している ・ハラスメントが起きている  ビジネスの現場で起こりがちな、これらのことのほとんどの場合において、モチベーションエリアの不一致の問題がみられるのだ。  しかし、自分のモチベーションエリアを知ったり、相手のモチベーションエリアを見当つけたりすることは、実は、私の1分間ドリルで各々身に付けることができる。そして、モチベーションエリア毎のコミュニケーションのあり方も、反復演習により作り出すことができるのだ。 「真田丸」では、「この子のために戦いにいくの!」と「目標達成」のモチベーションエリアを示した梅(黒木華)を、きり(長澤まさみ)が「あなた、戦は嫌いなんじゃなかったの?」という「安定の維持」のモチベーションエリアで切り返すシーンがある。しかし、このコミュニケーションは正しくはなかった。結果、モチベーションエリアの不一致が生じたがため、きりは梅を止めることができず、戦場で梅は命を落としてしまう。  もし、この時「この城の中で、民衆や子供を守ることも、その子のためになるのでは?」という、梅のモチベーションエリアに触れるコミュニケーションが図れたら、もしかしたら別の結末が待っていたかもしれない。  ビジネスの世界も言うなれば戦場だ。モチベーションエリアの不一致で、チームメンバーが痛手を負わないようにするためにも、モチベーションエリアに応じたコミュニケーションは不可欠なのである。 <文・画像/山口 博> 「モチベーションエリアに応じたコミュニケーションスキル」は、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)のドリル29で、セルフトレーニングできます。 ※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。 ■お知らせ チームを動かすファシリテーションのドリル』発売記念セミナー開催のお知らせ 本書の発売を記念して、5月12日(木)に著者・山口博氏のセミナーを開催いたします。 山口氏が開発した「分解スキル」を直接学べるチャンスです。ふるってご参加ください。 詳細はこちらから。 【山口 博(やまぐち・ひろし)】 グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身。
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チームを動かすファシリテーションのドリル

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