「焼津市の街おこし」に多摩美術大学が参画した理由
静岡県焼津市。マグロ、カツオ、サバなどなじみ深い魚の日本有数の水揚げを誇る地方都市だ。その焼津がいま「焼津 Designing Table」という「産官学連携」の新しい形に挑戦している。
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焼津市と多摩美術大学のコラボレーションによる「焼津 Designing Table」プロジェクトを設計したのは、多摩美術大学非常勤講師の北川佳孝氏だった。実は北川氏の本職はPRディレクター。大手広告代理店の博報堂戦略PR戦略局に籍を置く、PRの専門家でもある。テレビ・雑誌やリアルイベント、ソーシャルメディアまであらゆる手段を組み合わせて、施策を策定するPRのプロフェッショナルだ。
PRディレクターという職業のカバーする範囲は広い。デザイナーやイベンター、コーディネーターなどあらゆるジャンルのプロフェッショナルと連携しながら、PR戦略全体を策定していく。担当する企業には誰もが知る通信会社や航空会社、コンビニチェーンなど大手企業の名前がずらりと並ぶ。
もちろん大企業がクライアントならば相応の予算がつき、その範囲内で最大の結果を目指すことになる。だが「焼津 Designing Table」は少し事情が違った。焼津市からシティプロモーション予算として100万円が拠出されているものの、数か月以上かけて行われるPR施策の予算としては、文字通りケタが違う。広告会社の業務として引き受けるのは難しかった。
「そもそも焼津とのご縁は、焼津市に住む友人との個人的なつながりでした。ですから、PRもあくまで個人として、相談に乗れることがあればお手伝いをしようと考えていたんです。一方、多摩美術大学は、以前から博報堂のPRディレクターとしてブランディングや情報発信戦略に携わっていて、焼津市とのコラボレーションの話を雑談まじりに話したら、予想以上に好評で企画書を書くことに。いろいろと話を詰める過程で『いっそ北川さんが講師におなりになったら』というわけで、今こうなっています(笑)」
こうして今年の4月から北川氏には「多摩美術大学非常勤講師」という肩書きが増え、週に一度講義のコマを担当することになった。全学科の2~4年生を対象にした実践型・参加型デザイン教育科目で、科目名は「焼津市ソーシャルデザイン~『焼津市の街おこし』の仕事を通じて習得するソーシャルデザイン」。焼津を舞台に授業を行い、実際のアウトプットにつなげることを課題とし、評価方法も「プロジェクトへの貢献度を重視」。学生にとってはシビアにも思える条件だったが、定員として設定した20名の枠はまたたくまに埋まった。
『産官学連携のロールモデル作りが始まった』に続く⇒http://hbol.jp/9065
<取材・文/松浦達也>
― 焼津市×多摩美術大学。日本の産官学連携の未来【2】 ―
大手広告代理店社員と大学講師の二足のわらじ
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