ロケットが船に舞い降りた! イーロン・マスクのスペースXがまた快挙

なぜロケットを着陸させる必要があるのか

ファルコン9ロケットはその4本の脚で船の甲板をしっかり踏みしめた Photo by SpaceX

 スペースXは数年前から、宇宙に向けて打ち上げたロケットを着陸させ、回収する研究開発を続けている。その目的はただひとつ、ロケットを旅客機のように何度も使い回すことで、低コスト化を実現するためである。  スペースXを率いるイーロン・マスクCEOは、人類の宇宙進出、とくに火星への移住という野望を掲げている。そのためには人間が乗った宇宙船はもちろん、食料品や日用品、燃料、自給自足のための工作機械など、開拓に必要なあらゆる物資を、地球から大量に送り込まなくてはならない。  しかし、現在のロケットは1回の打ち上げで数十億円から100億円ほどもコストがかかる。それではお金がいくらあっても足らないため、低コストなロケットが必要不可欠となる。  現在のロケットが極めて高価なのは、打ち上げのたびに機体のすべてを海や宇宙に捨てており、打ち上げのたびに新しいロケットを製造しなければならないためである。そこでスペースXは、ロケットを回収して、メンテナンスや燃料の再補給だけでまた打ち上げられるようにし、さらにそれを何度も繰り返しできるようにすれば、大幅なコストの削減につながると考えている。  どれほどの根拠があるかはわからないが、マスク氏は過去に、「ロケットの価格を従来の10分の1から100分の1にしたい」と表明している。つまり10億円から1億円である。実現すれば通信衛星や地球観測衛星、有人宇宙船などを気軽に打ち上げられるようになり、宇宙利用は大きく広がることになるだろう。マスク氏が思い描く火星への移住も、夢物語ではなくなる。もちろんたとえ2分の1、3分の1程度にとどまったとしても、欧州や日本、米国の他社が運用している同性能のロケットに比べてはるかに安くなる。
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着地成功は2回目、ただし船への着地は初
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