「本のソムリエ」が説く核心的読書術――世の中に振り回されないための本選びとは?

世の中に振り回されたくなかったら本を読め

 人はその一生のうちで、誰から学ぶかで大きく人生を左右されます。日本人は「真似る」のが得意だと言われています。「真似る」とは「学ぶ」の語源です。日本人は、古くは中国大陸に学び、明治に入ると今度はヨーロッパに学び、そして戦後はアメリカに学び、70年経ちました。  しかし、もうアメリカに学ぶことってあるのでしょうか? 日本はこれから大きな矛盾にたくさんぶつからなければなりません。原発を含むエネルギーの矛盾や、少子高齢社会、経済のしくみ、集団的自衛権、沖縄の基地、教育や医療に関する矛盾……。私はアメリカに学ぶ時代はもうとっくに終わっていると考えています。では、これからの日本はどこから学んだらいいのでしょうか?

「縦糸の読書」と「横糸の読書」

「迷ったら原点」とは、元プロ野球楽天イーグルスの野村監督の言葉です。今の世の中、そりゃあ迷いますよ。時代の変化のスピードがとても速く、うっかりしていると、そのスピードに負けて振り回されてしまいます。  時代の変化に振り回されないために大切なのは、「直観」です。時代がどんどん流れているのに、今までのものさしでいちいち計っていたら、間違うに決まっています。では、「直観」を得るためにはどうしたらいいのでしょう? それは自分の〝思考の軸〟を持つことです。 〝思考の軸〟を持つには、時間が経っても古くならない「知恵のある読書」しかありません。時代が変わろうが、常識が変わろうが、変わらない「真理」というものがこの世にはある。私はそう確信しています。この人間の真理を学べる読書を、私は「縦糸の読書」と名づけました。  これに比べて、時代の常識的なことを知ろうとする読書を「横糸の読書」と呼んでいます。例えば「インターネットでラクラクお金儲け」といったノウハウ本ことです。 「横糸の読書」は「答え」を見つける読書です。もちろん役立つのですが、それだけだと時代や常識が変わったら役立たなくなる可能性があります。何より、ありがちなビジネス書をいくら読んでも、直観は生まれてきません。  一方、「縦糸の読書」は「問い」を見つける読書です。偉人伝や歴史の本、哲学の本、古典などには思想や哲学が詰まっています。「問い」を立てながら読むことにより、これらの叡智が自分の肚に落ち、〝思考の軸〟が身につくと、直観が出るようになります。  そうすればしめたもの、仕事も愛も人間関係のトラブルも、すべての自分独自の解決策が魔法のように頭から湧き出してくるようになります。  ちょっとやそっとの変化で振り回されないように、自分らしく生きていくために、私たちは「揺るがない柱」を心の中にしっかりと立てておくことが肝心です。若いみなさんには、流行に振り回されない読書の仕方を身につけてほしい、読書で折れない心を培ってほしい、と思いながら、私は本をオススメしています。 【清水克衛氏】 1961年東京生まれ。書店「読書のすすめ」代表、NPO法人読書普及協会顧問。大手コンビニの店長を10年務めた後、平成7年に東京都江戸川区篠崎で書店を開業。小さいお店ながら「本のソムリエから直々に本をススメて欲しい」と全国からお客さんが訪れる。最新刊は『魂の読書――世の中に流されるな!』(育鵬社)。 <写真/quattrostagioni
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魂の読書

?と!が思考の軸をつくる

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