「今の北海道の鉄道路線を見ると、函館~札幌間の特急需要は比較的大きい。函館~札幌間のビジネスユースはそれほどないので、大半は観光客でしょう。ただ、今回の新幹線は函館止まり。それでは道民にとってほとんど関係ないし、観光客にもロクに役に立たない。だから、函館~札幌間を先行開業して一定の成果を上げてから、全線開業につなげるのが理想だった」
需要はそれなりにあった札幌ー函館間 photo by ウツダー(CC BY 2.1 JP)
新青森~函館間と比べて時短効果が大きく需要喚起にもつながる函館~札幌間の先行開業こそが必要だったというのだ。このような例は、九州新幹線で見られた。先行して新八代~鹿児島中央間を開業し、その後博多~新八代間を開業している。当初、沿線に主要都市の少ない先行開業区間の利用者は少ないと予想されていたが、新八代で特急と接続する「リレーつばめ」の運行などもあって思いのほか健闘。九州新幹線鹿児島ルートの全線開業弾みをつけている。この手法を北海道新幹線でも採用することはできなかったのか。
「整備新幹線は、国が決定する整備計画に基づいて建設が進められます。今回の開業区間148.8kmのうち、約3分の1を青函トンネルが占めています。この青函トンネルは、当初から新幹線が通ることを前提に作られたもの。そのため、設備の更新などは必要ですが、構造物そのものを新規に建設する必要はありませんでした。こうしたことから、工期・費用面いずれを見ても、函館~札幌間を先行する理由は見つからなかったわけです。函館~札幌間先行開業は、議論にもなっていないと思いますよ」(前出の専門誌記者)
さらに、時の政権の方針に左右されがちな整備新幹線では、“実績作り”が重要という側面もあるという。
「時間とお金のかかる先行開業を議論の俎上に載せれば、そもそもの“北海道新幹線不要論”に繋がる可能性が高い。それと比べれば、すでに3分の1が出来上がっている現開業区間なら、不要論にはつながりにくい。まず青函トンネル区間を作ってしまい、『北海道新幹線開業』という実績を作る。そうすれば、『札幌延伸』も滞りなく行われるという算段があったのかもしれません」(前出の専門誌記者)