中国、北朝鮮との緊張が高まる東アジア情勢――辺野古移転問題に出口はあるのか?

普天間 今年は国際的に危機の予兆がうかがえる。  オバマ米国大統領は任期終了を間近に控え、いわゆるレームダックと化している。加えて米国は既に「世界の警察官ではない」ことを表明している。  北朝鮮による核軍備強化を伴う挑発、中国による尖閣諸島方面への侵略行為、南シナ海、東シナ海への武力による進出など、我が国を取り巻く情勢は一寸の油断も許されない。  最も懸念されることは、朝鮮半島有事の発生や欧州方面における大規模テロ事件の発生などで世界の耳目がそれらに集中している間に、中国が先述した海域で軍事行動を起こすことである。  ここで沖縄の地政学的価値がますます重要になってきた。  とりわけ沖縄に駐留する米海兵隊(第3海兵遠征軍)、米空軍(第5空軍)の存在意義は大きい。特に海兵隊は新型垂直離発着機オスプレイの運用と相まって、島嶼着上陸戦や近接戦で中国人民解放軍のそれを圧倒している。  ところが、この沖縄で米海兵隊の撤退を工作する動きが活発化してきている。その第一段階が普天間米海兵隊航空基地の県内移設阻止闘争とオスプレイ配備反対運動である。  同基地は、あたかも市民が基地を取り巻くように居住しており、周辺の人口増加率も過去5年間で4.2%、人口は97,581人(2016年2月現在)を記録している。  海に面している嘉手納米空軍基地などは、万が一、航空機にトラブルが発生した際には海上への不時着も選択肢にあるが、普天間基地の場合は周囲を民家に囲まれており大惨事を招く恐れがある。  そのような状況にもかかわらず、1996年に日米両国政府間で県内移設を条件に返還合意が成立してから20年が経過したが、未だ移設のめどが立っていない。返還合意後、辺野古移設で進んでいた計画は、2009年、当時の民主党政権の鳩山由紀夫元首相による「最低でも県外」発言で、大混乱に陥った。これが今に至る迷走の始まりである。  最近の状況は、翁長雄志沖縄県知事が、移設予定先である名護市にあるキャンプ・シュワブの辺野古沖合埋め立てを「新基地建設」と反対し、2015年10月、辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。  石井啓一国土交通相が翁長知事の承認取り消しの効力を停止し、防衛省が埋め立ての工事に着手すると、今度は地方分権を盾に、国の効力停止は違法だとして、裁判闘争に持ち込んだ。  国と県は現在、辺野古移設をめぐり三つの訴訟を争っている。  これに関して昨年11月、国が翁長知事に対し、埋め立て承認取り消しの撤回を求めて提訴した代執行訴訟については、福岡高裁那覇支部が示した和解案を双方が受け入れる考えを示し、和解が成立。政府は辺野古での移設工事を中止した。  ところで3月16日に閉幕した中国の全国人民代表大会で、最高人民法院(最高裁)周強院長が活動報告を行い、「尖閣海域で中国の司法管轄権を明確にした」とアピールした。尖閣諸島付近の海域で起きたパナマ船籍の貨物船と中国漁船による衝突事故を、中国海事裁判所が処理したというのだ。我が国の主権蹂躙も甚だしい。  しかし、翁長知事はこの発言には一切抗議していない。  中国人民解放軍の政治工作条例には「三戦」の任務が明記されている。三戦とは敵国の内部攪乱を目指すもので、法律戦、心理戦、世論戦の3つの戦術である。翁長知事の活動を観察していると、まるで三戦の代理戦争を祖国日本に対して仕掛けているように見える。
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そもそも普天間基地は国連軍の指定基地
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沖縄が中国になる日

中国による巧妙な沖縄侵略計画の全貌を暴く。