中国はこの鉄道シルクロードで中央アジアでの経済的な支配と陸路でのヨーロッパとの流通の支配という遠大な構想をもっている。その基盤になっているのが中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンで構成されている「上海協力機構」である。
またロシアもかつてソ連を構成していた中央アジア諸国との経済協力を目的にロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスとで「ユーラシア経済連合」を結成している。
将来的にはこの二つの組織が共有しての輸送手段としてこの鉄道シルクロードの発展があるという。これはまたプーチン大統領が常に描いているリスボンからウラジオストックまでを結ぶ共同市場とも合致する面もあるということで中央アジア諸国もロシアもこの鉄道に強い関心を示している。
もちろん、中央アジア諸国には日本も目を向け始めている。
昨年10月に安倍首相が中央アジアを歴訪した。訪問先はトルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタンそしてモンゴルであった。それはこれまで日本が手を抜いていた中央アジアとの関係強化である。中央アジアはそれまでソ連の支配下から独立して独自の経済発展を目指しており、特に日本からの技術協力に関心を示している。またこの地域は石油や天然ガスも埋蔵している。日本はこれから益々緊張が高まる中東からの石油の輸入とは別に石油の新しい輸入先を増やして行く必要があり、そのためにも中央アジアとの連携は今後の課題になるだろう。
ヨーロッパの経済は低迷している。鉄道シルクロードが将来どれほど発展するか未知数である。しかし、中央アジアはこの恩恵を受ける可能性はあり、たとえスペイン発の便に利用者が少なくとも存在価値はないとはいえない。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身