「無理にでも放射能と折り合いをつけないと生活できない」。南相馬住民の苦悩

「放射能のついているモノなんて送らないで」と叱られる

S子さんの暮らす仮設住宅。若い世代が避難しているため、平均年齢は75歳近い

 若い世代が市外に避難をしているので、S子さんの住む仮設住宅はお年寄りばかりだ。 「お年寄りの楽しみとして、市外に避難している孫にプレゼントを送る人が多いのですが、娘に『南相馬のものを送ってこないで!』と言われて突き返されることがよくあるようです。『放射能のついているモノなんて送らないで』と叱られるんです。  コンビニでわざわざ市外のものを選んで買って送っているくらいですよ。若い世代とお年寄り世代の放射能に対する考えは大きく違います。私も無理に戻ってきてもらいたいとは思いません」(S子さん)  南相馬で取材を進めると、後者のS子さんと同じ考えを持っている人が多いようだった。都会の住民は「放射能が不安なら、移住すればいいのでは」と言うかもしれない。しかし福島の住民にとって、慣れ親しんだ地元を離れることは、簡単にはできない決断なのだ。 「無理にでも自分を納得させて、放射能と折り合いをつけないと生きていけない」と話すS子さんの心境は複雑な放射能をめぐる状況を語っているように思えた。 <取材・文・撮影/白川愚童>
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