「ほかの農家さんだったら、このタイミング(完熟)で収穫したイチゴは、熟しすぎていて出荷には向きません。肥料のチッソ分が多いほど腐りやすいんです。だけど、うちのイチゴはチッソ肥料を使っていないんで、完熟で収穫しても日持ちします。ただし、まだまだ栽培が不安定で数がとれないんですけど……」
こう苦笑いする出井さんのハウスでは、糖度17度の“甘熟イチゴ”がとれることもあるという。
チッソ肥料で過保護に育てられたイチゴは、赤黒くエグ味が口の中に残る。天候と湿度にもよるが、無肥料で育ったイチゴは腐らずに朽ちていく傾向が強い。チッソ分は硝酸態チッソの形で根から取り込まれる。日照時間と降水量に影響され、天気が悪いと消化しきれなかったチッソが実に多く残って味を落とす。さらに、病害虫の脅威にもさらされてしまう。
「最高においしいイチゴが食べたいなら、イチゴ狩りに行って完熟状態のものをすぐに食べるしかありません。晴天が続いている時に出かけることをオススメします」(出井さん)
取材・文/田中裕司(ノンフィクションライター。著書に、「不可能」と言われたイチゴの自然栽培に挑む30代夫婦の姿を描いた
『希望のイチゴ~最難関の無農薬・無肥料栽培に挑む~』など)