トランプを押し上げた「NYで消されたクリスマス」現象

 米大統領選の共和党指名争いで首位を走る不動産王、ドナルド・トランプ候補の勢いが止まらない。本命中の本命として、共和党候補者選挙の主役に躍り出たトランプ氏を、共和党自身が引き摺り下ろそうと躍起になる。  また、3月19日には同氏の地元であるニューヨークのミッドタウンで、移民擁護団体など数百人が参加する抗議デモが繰り広げられ、逮捕者も出た。そんな異常な事態が一層トランプ氏への期待と醜悪さを浮き彫りにしている。 「この国には公正で中立的なバカが多すぎる」 「メキシコ国境に壁を造れ」「イスラム教徒の入国は禁止せよ」など、トランプ氏の主張には呆気に取られるものが数多い。しかし、彼のこの言葉だけは、なぜか私の頭に引っかかっている。  私も昨年12月、ニューヨークにいたのだが、五番街の喧騒の中を歩いていて、強い違和感に襲われたことを覚えている。世界一のブランドショップ街に、「メリー・クリスマス!」の文字がほとんど見当たらないのだ。  一年を通じて最大の商戦であるクリスマス商戦の真っ只中にもかかわらず、五番街にはメリー・クリスマスに代わって、「ハッピー・ホリディズ!」の文字が溢れていた。  このような変化はここ3~4年、徐々に進んできた。それは、異教徒に対する“配慮”からだと聞いた。ニューヨーク在住歴25年の日本人女性は、事もなげに私にこう言った。 「友人にも、ハッピー・ホリディズですね。どんな宗教を信じているかわからないし……」  ご存知の通り、アメリカ社会は人種・宗教のるつぼであって、既に非英語人口は約20%に及ぶと言われている。WASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)が社会の基盤にあった時代は、遥か遠い過去である。 「どうしてキリスト教のお祭りなのに、ユダヤ教の人もイスラム教の人も仏教の人もメリー・クリスマスと言わなくてはいけないんだ? それはキリスト教の驕りではないのか?」 「宗教の押し付けは止めてくれ」  このような動きが現在のアメリカ社会に、強いうねりとしてある。
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アメリカでの新聞の論調は?
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