半世紀前のゾンビ事業「大戸川ダム」がアベノミクスで復活!?

今さら必要性を検討すること自体、理解に苦しむ

宮本博司・元国土交通省近畿地方整備局河川部長(2016年2月25日)

 利水や発電事業が撤退して消滅したはずのダム計画が、安倍政権下におけるダム検証で「ダム案が有利」として、ゾンビのように復活の兆しを見せている。1968年に着手、2009年に亡霊化した「大戸川ダム」(滋賀県大津市)である。総事業費は約740億円。半世紀前の計画がなぜここへきて復活しようとしているのか、関係者に話を聞いた。 「『大戸川ダムができても計画水位のギリギリ下、なければ19cm上。200年に1回の特定の洪水に対して、そんな微小な水位の差のために作るダムなんて、緊急性は低いでしょ!』と言うたんです」と呆れた口調で、かつて国土交通省近畿地方整備局に投げつけた言葉を再現してくれたのは、国交省近畿地方整備局河川部長まで務めた経歴を持つ宮本博司さんだ。  宮本さんは早期退職後、一京都市民として市民参加の場である「淀川水系流域委員会」に参加した。そして、京都府、大阪府、滋賀県の知事たちに大戸川ダムがいかに不要不急かを説いた。その結果、3知事は2009年に揃い踏みで、大戸川ダムを「計画に位置づける必要がない」と河川法に基づく公式意見を出した。それが、この事業が凍結されていた経緯である。 「想定外の雨が降ったら、ダムの効果は非常に小さいか、まったくない。鬼怒川でも実証された。それなのに大戸川ダムの効果は、想定洪水でさえも限定的。今さら必要性を検証すること自体、理解に苦しむ」と宮本さんは憤るのである。
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「ダムに頼らない治水」が着々と進んでいた
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