高騰の都心マンション。あえて狙うなら川崎エリア

マンション

円安による材料費高騰に加え、人件費上昇という追い打ちまで……

 不動産経済研究所によれば、6月の首都圏新築マンション契約率は76.6%となり、好不調の目安になる70%を超えたという。増税による“先食い”の反動を受けて落ち込みは見せたものの、依然、好調をキープしているように思える首都圏のマンション市場。しかし、「ハッキリ言って、今都心のマンションを買うと“高掴み”になるでしょう」と話すのは住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。 「山手線の内側の都心部に立地する物件はアベノミクス前よりも2割は値上がりしています。私は“ミニミニバブル”と呼んでいるのですが、今はバブルの頂点。高値づかみをしてしまいかねません」  では、バブルが弾けて値下がりしたときが買いなのかといえば、そう単純な話でもない。現在のマンション価格の高騰は、需給関係よりも建築費がかさんでいることが主な理由になっているからだ。 「よく円安のせいだなんて言われますが、実は人件費が高騰しているから。コンクリート建築には欠かせない型枠大工や鳶の人たちの多くがリーマン・ショックのときに廃業してしまっているうえ、震災復興に人を取られて、業界は人手不足なんです。これから五輪バブルもありますから、建築費は当分下がりませんよ」  市況の好調さも、実際には一部の高級マンションの売れ行きに支えられているだけだという。 「中国人が投資目的で買い漁っているのと、富裕層が相続税対策で購入しているというだけの話です。庶民向けの普通のマンションはそれほど売れていませんよ。実需がマンション価格に追いついていない。アベノミクスで個人所得は上がったといっても、それ以上に物価が上がっているので、実質マイナスですから。無理して高額のマンションを買うべきではない」  一般サラリーマンにとっては厳しい状況と言わざるを得ないが、ただ、そんななかでも穴場的なエリアはないのだろうか? 「あえて挙げるならば川崎市の川崎区でしょうね。都内にもアクセスがよく、本来ならばマンション価格もそれなりのはずなんですが、再開発に伴う新築マンションの過当競争で現在は値崩れが起きています。坪単価が160万円と、300万~400万円はする東京の世田谷区のほぼ半値。バブルの時代でもここまでの差はつきませんでしたから、今買うならこのエリアですね」 <取材・文/HBO取材班 写真/時事通信社>