目玉は新駅だけじゃない。品川駅周辺の再開発

品川車両基地周辺

大規模な再開発が行われ新駅が建設される品川車両基地周辺

 2020年に、JR品川駅‐田町駅間に開業予定の新駅。この新駅を目玉に、品川駅周辺の再開発が活発化している。不動産に詳しいフリー編集者の中川寛子氏は、次のように語る。 「大規模な都心最後の品川駅周辺の開発の軸になるのは、JRの品川駅‐田町駅間にできる山手線新駅と中央リニアの建設。加えて京浜急行品川駅のホーム移転とそれに伴う駅近辺の開発です」  新駅は、駅間の距離が2.2kmと、山手線でもっとも長い品川駅‐田町駅のほぼ中間に建設される。地下鉄の泉岳寺駅から近い場所だ。 「新駅建設予定地には、駅以外にも約13haの駅西側の車両基地跡地に、オフィスビルや商業施設が建設予定です。東京都心でこれだけの規模を開発できるのは、これが最後かもしれません。完成すれば、周辺の昼間人口は10万人増加するという試算も出ています」  ’03年に六本木ヒルズがオープンした際は、昼間人口が3万人増加したことを考えると、新駅の建設は、かなり大規模な開発だということがわかるだろう。 「なんといっても、山手線の新駅ですからね。インパクトは大きいです。特に周辺に何もなかった場所だけに、大規模な商業施設ができれば十分、集客効果が見込めると思います」  この流れに続きたいのが京急だ。 「現在、京急品川駅はホームが2階にあるため、大きな荷物を持った乗客にとっては乗り換えが非常に不便です。このホームが1階になると段差がなくなり、JR品川駅との東西の通路が通り抜けやすくなり、利便性が高まります」  京急は、ホームを含む駅舎の再開発に加えて、線路の高架化も検討しているようだ。 ◆羽田へのアクセス向上が首都圏の経済を活性化 「品川駅の南方面には、開かずの踏み切りで有名な八ツ山橋陸橋と急カーブがあり、スムーズな運行の障害になっていました。このあたりが高架化され、急カーブも改善されれば、開かずの踏み切り問題も解消し、従来は羽田空港まで最短12分だったのが、10分程度まで縮まるかもしれません」  羽田空港線は京急にとってドル箱路線。羽田空港の24時間化や国際線の増加が進められていくなか、空港へのアクセス向上は、重要な課題と位置付けられているようだ。  また忘れてはならないのが中央リニア新幹線。そのターミナル駅は、品川駅の地下になる予定だ。 「品川駅始発のリニア新幹線は2027年に開業予定です。リニアをきっかけに、品川駅は東京駅を超える一大ターミナルになる可能性があります。これ以外にも、リニアに先駆けて来春、上野東京ラインが開業し東北本線(宇都宮線、高崎線、常磐線)が東京駅まで乗り入れるようになるのですが、これが品川駅で折返し運転になるという話があり、北関東からの集客が見込めます。また、東京駅や新木場駅と羽田空港をつなぐ羽田アクセス新線の計画も。品川と羽田のアクセスが向上すれば、それだけで首都圏の活性化につながると思います」  ただし「施設が整備されただけでは不十分」と中川氏は指摘する。 「利便性が良くなった結果、品川駅がただの通過駅になる可能性も否めません。品川駅も東京駅のように、滞在してもらえる観光地的な魅力が必要でしょう。品川宿などを活かした再開発や自治体の取り組みに期待したいですね」  少なくとも今後10年は、品川再開発から目が離せない。 <取材・文/HBO取材班>