同性パートナーの保険金受け取りに公的証明書は不要――ライフネット生命の対応拡大の理由

必要なのは「住民票」と「確認書」

 もっともライフネット生命保険では、これまで異性間の事実婚のパートナーについては受取人として認めてきた。ではなぜ今回のタイミングで「同性婚受け入れ」を公式に発表したのだろうか。 「保険会社のミッションは『必要な方に必要な保険を届ける』こと。お客さまの利便性を一番に考え、保険加入審査で必要な書類は『お二人(それぞれ)の住民票』と、お二人の意思を確かめる『確認書』の3点で基本的にお申し込みいただけます。一部自治体の『証明書』ではなく住民票である理由は、コストや手間をあまりかけずに全国どこでも取得できるためです」(同社)  さらに大きいのは「保険会社が同性パートナーへの対応を公にした」という方針だ。ライフネット生命保険では、全国同一基準で申し込みできる仕組みを用意しただけでなく、誰もが気軽に情報アクセスができるよう同性カップル向け特設サイトを開設。ルールをわかりやすく明文化し、確認書のダウンロードなどもサイトで可能だ。
確認書

確認書は二人の「住所」「氏名」「生年月日」を記入して捺印するだけとシンプル。

 今回の受取人の指定範囲の拡大では、顧客とのコミュニケーションの準備に時間をかけたという。 「お客様に電話で対応する、コンタクトセンターの担当者に対する研修内容や、ウェブサイトに記載する文言について、専門家や同性パートナーに持つ方にも監修していただきました。また、外部専門家を招いた『ダイバーシティ研修』を、電話窓口担当者を含め全社員に実施しました」(同社)  受取人範囲の拡大の発表からおよそ4ヶ月が経った。現在までに、多数の問い合わせが寄せられているという。 「今後さらに当社サービスについての認知が広まることで、少しずつ同性パートナーを受取人に指定する方が増えると予想しています」(同社)  かつて、LGBTを公言しているマツコ・デラックスがTV番組中で「(LGBTのパートナーへ)何十年連れ添っても保険金を残すことができない。せめて保険会社が受取人の範囲に柔軟性を持ってくれたら」と提言したことがある。今回の生保業界の変革は、そうした負担を取り除く大きな一歩となるだろう。企業、自治体、コミュニティ……そうした社会との架け橋になる装置が、多様な性のありかたを受け入れれば、誰もが暮らしやすい社会により一歩近づくはずだ。<取材・文/杉山元洋>
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