4兆円企業「IKEA」の強かな経営戦略を日本法人の決算から考える

現代の生活シーンにマッチした豊富な製品ラインナップ(Product)

 イケアの製品は、基本的に世界統一のラインナップで販売されています。それだと、各国の細かいニーズを捉えきれなそうなものですが、その代わりに、日本に進出した際にも相当な数の住宅を実際に家庭訪問する等、ラインナップの中から何を売り出すべきかのリサーチが徹底されています。  そして、広大なイケアの店舗には約1万点の製品が置いてあるそうですが、それらを的確に生活を想起させるスタイルで展示したり、1年で1500もの新商品を投入する等の継続した改善も絶えず行われています。例えば、従来の2人掛けソファが日本では大きすぎるなら1.5人掛けのソファをラインナップに加える、という感じですね。 また、従来の家具の主戦場であった、家族が集まるリビング向けだけでなく、個人が過ごすベッドルーム向けのラインナップに力を入れ、ただ寝るだけだった場所にちょっとした癒しや楽しみを提案した点も画期的でした。

設計、生産、物流、顧客まで巻き込んで実現する低価格(Price)

 イケアの魅力の一つとして、自分で組み立てる手間はあるものの、低価格であるという点が挙げられますが、それを実現しているのが徹底したコスト管理です。上記で触れた「フラットパック」もその代表的な工夫の一つで、平らな段ボールに家具をパーツ単位でコンパクトにまとめて収納することで、積載効率を高め、物流コストを圧縮するとともに、配送時に傷つける回数を減らすことで保険費用も抑制しています。なので、イケアのデザイナーはデザインする際にフラットパックの梱包まで設計する必要があるわけですね。  また、生産設備を持たないメーカーのことをファブレスといいますが、イケアはまさにこれにあたります。である以上、パートナー企業の管理は品質・価格の生命線になるわけですが、同社はかつての冷戦時代は東欧、現在はアジアと、安くて質の良い生産拠点の確保に長けてる上、数を絞って選定した業者とは大量かつ長期の契約を結ぶことで、毎年商品コストを2%下げ続けることを経営目標に掲げるほどの姿勢が貫かれています。
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目指すはディズニーランド?エンタテイメント性を持つ家具屋
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