南米チャベス路線の終焉。ベネズエラ・マドゥロ大統領、亡命までのカウントダウンが始まった

ジカ熱感染拡大と医薬品の不足が襲うベネズエラ

 ベネズエラのカラカスに駐在する欧州連合(EU)の外交筋によると、〈食料、医薬品、ガス、電力の不足は深刻な事態にある〉という。更にそれに追い打ちをかけるようにジカ熱の感染が拡がっている。(参照「Hechos de Hoy」)。  政府は〈4000人が感染している〉と認めているが、NGOでは〈感染者は既に40万人〉と推計しているという。医薬品が不足しているベネズエラでジカ熱の感染拡大を防ぐ能力はないと見られており、隣国のコロンビアとブラジルはそれが拡大することを非常に恐れている。(参照:「ABC」 )。  スペインのサッカー1部リーグのマラガチームでプレーしているベネズエラ出身のフアンピー選手はベネズエラで薬を手に入れることは〈「冒険をするようなものだ」〉と述べて薬を手に入れるのが如何に困難であるかを『El Pais』紙のインタビューで語った。

16年間で600%超のインフレ

 マドゥロ政権が終焉を迎えざるを得ないベネズエラ経済の疲弊した状態について、3紙『infobae』、『infolatam』、『La Vanguardia』が挙げている数字からかいま見ることが出来る。  それによると、チャベス大統領が政権に就いた1999年からマドゥロ現政権の2015年までの16年間に〈インフレは615.3%〉上昇した。〈チャベス政権時が309.7%、マドゥロ政権時が305.6%〉だという。特に僅か3年間のマドゥロ政権でのインフレの上昇は激しく、〈2013年は56.2%、2014年は68.5%、そして2015年は180.9%〉を記録した。〈2014年と2015年の2年間でGDPは9.6%後退〉した。1990年代は国家の歳入の70%が原油の輸出に依存していた。しかし、産業の後退と共に税収が減少し、2000年代になってから歳入の90%が原油の輸出に依存するようになった。しかも、原油価格の下落で歳入は大きく減少。その事情下で、例えば、2014年の原油の輸出は370億ドル(4兆4400億円)であったのが、2015年には半減して125億8700万ドル(1兆5100億円)まで歳入が減少した。その影響で2015年の収支バランスは181億5000万ドル(2兆1780億円)の赤字となった。  軍人出身の州知事らも〈アリアス・カルデナスを筆頭にマドゥロ大統領の政権放棄を望んでいる〉という。勿論、彼ら軍人出身の州知事の間で大統領のポストへの就任要請を期待している者もいるという。また、コロンビアのウリベ前大統領のある協力者は〈マドゥロ大統領がコロンビアのサントス大統領に亡命したい旨を伝えた〉という。  コロンビア政府は勿論それを否定している。(参照:「El Mundo」)。 <取材・文/白石和幸 photo by Kremlin.ru(CC BY 4.0)> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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