有機栽培は、農薬と化学肥料に依存した近代農法への反省から生まれ、「安全・安心」を旗頭にしてきた。
有機栽培は大きく2つのタイプに分けられる。農業用資材への依存の強い“メタボ有機”と、農家が自前の完熟堆肥を適度に使う“抵投与型有機”だ。
低投与型有機と自然栽培には「土はつくるものではなく、育てるもの」という考えがある。土壌微生物の働きを重視し、いかに微生物を増やすかに力を注ぐ。大きな違いは「堆肥を畑に入れるか入れないか」だ。
“メタボ有機”の農家が使う堆肥の材料はバラエティに富んでいる。収穫物の残渣、家畜の糞尿、油粕、魚粉、骨粉から、グアノ(コウモリの糞)、肉粉、皮革粉、血粉、カニ殻、コーヒー粕……。
行き場のない家畜の糞にバークなどを混ぜ合わせて整えたものが「有機肥料」として売られているが、何がどれくらい入っているのかはわからない。牛糞、鶏糞などは完熟させなければチッソ分の多い肥料になってしまう。そしてこれらの投与が、作物を硝酸態チッソ過多の“メタボ”状態にしてしまうのだ。
肥料には「葉や茎を伸ばす」チッソ、「花や実つきをよくする」リン、「根張りをよくする」カリウムなどがある。だが、必要な量を適切にコントロールしながらまくのは難しい。根は、土にチッソがあればあるだけ吸ってしまう。植物はチッソの排泄能力を持っていないので、使い切れない分はため込んでしまう。
いくら「有機」といっても、肥料選びを間違えると化学肥料以上にチッソ分の多い肥料を大事な畑にまくことになる。残留したチッソ(硝酸態チッソ)に病害虫が寄ってくるため、こうした畑で育つ農作物は病害虫の餌食になりやすい。そして手におえなくなり、逆に農薬依存度を高めてしまう。