さらに欧州も抱えた火種はドイツ銀行だけではない。その第1候補がグレンコア(Glencore)という企業だ。スイスのバールに本社があり、金を始め天然資源の開発と商品先物取引を主要業務としている。グレンコアの金融規模は1000億ドル(12兆円)と言われているが明確にされていない。天然資源の価格が下しているのが同社の経営を苦しくしている。しかも損失額が明確にされておらず、それが同社の株価が下落し続けるという理由だという。仮に倒産すれば、リーマン・ブラザーズの規模に匹敵するというさえ言われている。
こうした危険因子を抱えている中、銀行の貸出資金は大きく膨らんでいる。
国際決済銀行(BIS)によると、〈世界で支払いを伴う契約の想定総額は710兆ドル(8京5200兆円)〉にのぼるという。この総額は〈2008年の金融危機時に比べ20%増加になっている)という。因みに、米国の2014年のGDPが17兆ドル(2040兆円)であったのに比較して、その巨額さに驚かされる。
景気が上向きで金融市場が安定していると銀行の巨額の貸出しも問題にならない。しかし、景気が低迷を続け金融市場が不安に包まれ安定性を欠くようになると資金の流れも滞り、金融機関にも倒産が見られるようになる。どの金融機関もその貸出額の規模が巨額であるが故に、一旦倒産すると津波のように関連先を呑み込むという恐れがある。現在、世界規模で景気の低迷が続いている。危険地帯に足を踏み入れているという状態だ。
引き金は引かれるのか?もし引かれるとしたら、その引き金を引くのはどこなのだろうか?
<取材・文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身