不支持率が40%に。国内でもEU内でも立場が揺らいできたメルケル政権

連合政権内部からも不満の声。そして右派勢力の台頭

 そして、メルケル首相が率いる自党内そして連合政権を構成しているキリスト教社会同盟(CSU)からも彼女の難民対策に不満の声があがっており、両党の3分の1の議員がメルケル首相の方針に反対しているという。  しかも難民の受け入れに反対している新興右派政党「ドイツの為の選択肢(AfD)」が国民からの支持を集めており、既に〈その支持率は11%を達成している〉という。(参照「El Pais」)。この政党への支持率の上昇を反映しているかのように、ドイツ警察の統計によると、〈2015年の難民宿泊所への右派グループらの暴漢事件は数千件に及び、2014年に比較して5倍に増えた〉という。(参照「El Diario」)。  更にメルケル首相を苦しい立場に立たせているのが難民の救済金が当初予定していた予算を大幅に上回る可能性があるということである。当初、ドイツ政府は難民救済金として〈国家予算の中から60億ユーロ(7800億円)を拠出〉させた。しかし、今年は〈難民の宿泊そして生活維持費として170億ユーロ(2兆2100億円)が必要〉とされており、それに加えて50億ユーロ(6500億円)が難民のドイツ語修得や社会に同化する為の指導費として支出が予定されている。そして2017年までに220万人の難民を受け入れるとした場合には550億ユーロ(7兆1500億円)の資金が必要となると見込まれているという。2015年の財政黒字額120億ユーロ(1兆5600億円)も必要な難民支援金の前には全く不十分な金額となっている。  雇用連邦局は〈難民の社会同化はドイツ経済にとって長期的には有益になる〉という主張を繰り替えしている。その一方でメルケル首相は〈「多くの難民は永住する為に来たのではない」〉と述べて増加する難民への脅威を拭い去ろうとしている。  ドイツは第二次世界大戦後の復興時期にトルコから250万人がドイツに移住して不足していたドイツの労働力を補ったという経緯もある。  繰り返しつつある歴史はメルケルの今後にどのような影響を及ぼすことになるだろうか。 <取材・文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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