空き家問題放置の一方で建設ラッシュ。歪な住宅政策が招く資産崩壊

一時的な景気対策として利用されている建設ラッシュ

 この新築至上主義を継続することで潤うのは、当然ながら不動産業界と建築業界であり、住宅ローンを扱っている金融機関だ。しかし、ここには政治も深くかかわっていると城戸氏は指摘する。 「住宅建築1000戸の経済効果は、持ち家の購入の場合、投資額250億円に対し、最終需要に対する生産誘発額は517億円にもなるといわれています。付随する雇用誘発や税収効果も大きく、自分の任期中という短期間で、景気刺激策の効果を数字的な結果としてみせたい政治家にとっても、なかなかやめられない流れだといえます。つまり、不動産業界、建築業界、金融機関のみならず、政治家までもが既得権益者となっているのです。彼らにとっては、空き家問題を棚上げにしてでも、短期的に効果のある景気刺激策を狙いたいのが本音なのでしょう」  2011年の東日本大震災からの資材不足と、2020年の東京オリンピック開催に向けての開発ラッシュが重なり、建築資材が値上がり、結果、都市部の新築マンションの価格はまるでバブル期のように高騰。家が余っているはずなのにまだまだ建てる、しかも値段がなぜか上がっている。そんな歪な現状は深刻な事態を招く。 「一部のタワーマンションではバブルの様相を呈していますが、本来、どんな市場でも商品の流通量が増えればそのモノの価値は下がるはず。つまり、不動産市場に新築を次々と流し込めば、住宅を所有している人の資産はどんどん目減りしていってしまいます。日本中の持ち家の資産価値が下がり、売ることも貸すこともできず、維持するにもコストがかかるし、壊すにもコストがかかる……。もうすでに危険領域に達している『空き家問題』は他人事ではなく、実は我々の資産の蝕んでいく切実な問題だと認識する必要があります」 <文/HBO編集部> 【城戸輝哉氏】 建築・リノベーションプロデューサー、不動産コンサルタント。自身がCEOを務める「スマサガ不動産」が「営業マン不在・物件広告なし」という業界の常識を覆すスタイルを確立し、口コミとホームページのメッセージだけでクライアントが集まる住まい探しとリノベーションの専門家集団として大きな注目を集める。初の著書となる『不動産業界の人だけが知っている新築マンションは買わないほうがいいワケ』が2月2日発売。
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動産業界の人だけが知っている新築マンションは買わないほうがいいワケ

あなたの「住まい探しに関する常識」は間違いかもしれません