マドリードにあるマクドナルド photo by Mimi-chan(Public Domain)
スペイン人がマクドナルドなどファーストフードでひとり当たり年間に使う消費額は僅かに42ユーロ(5,334円)で、日本は231.35(29,381円)ユーロで世界でトップの消費額となっているというリポートをスペインの「EAE Business School」が発表した(参照/「
El Pais」)。
EAEが掲載した統計によると、日本の次に消費が高い国は米国205,37ユーロ(26,082円)、オーストラリア178.06ユーロ(22,614円)、カナダ175.64ユーロ(22,306円)という順になっている。一方、ヨーロッパでスペインよりも消費の少ない国はイタリアで28.14ユーロ(3,573円)、最も消費の高い国は英国の97.96ユーロ(12,440円)となっている。
もちろん、スペインでもファーストフードの消費金額が高い地域もある。トップのバレアレス諸島は〈97.63ユーロ(12,399円)を年間消費〉している。ただ、そこはマヨルカ島やイビサ島などがある観光で市の財政が賄われている地方なのだ。即ち、多くの外人観光者が利用しているというように理解される。2位のカナリア諸島や3位のマドリードも同様に外国からの観光者がそこでファーストフード店を利用していると想像される。
このレポートを作成したマルタ・リエラさんによると、ファーストフードの消費額が少ない理由として、スペインには地中海料理といってファーストフードよりも健康的な食事が普及していることと、ファーストフードの店舗が少ないという点を挙げている。EAEのリポートによれば、〈スペインのファーストフード店舗数はマクドナルドの500店舗を含めて4420店〉ある。一方、日本はマクドナルドだけでも3164店舗ある(2014年12月31日現在。
日本マクドナルド社CSRレポート※PDF注意)。
筆者の考えでは、上記の理由以外にもメンタルの違いがあるのではないかと思う。スペイン人は食事はじっくり会話しながら食べるという習慣が身についている。しかも、市街にはファーストフードが進出し難いほどにバーやカフェテリアがふんだんにあり、そこで食事が出来るようになっているのだ。それに対抗する意味でスペインではファーストフードでもビールは販売されている。
スペインに存在するファーストフードチェーンは、マクドナルドとバーガーキングだけで63%の市場占有率を持っていることが、スペイン経済紙『
Libre Mercado』が掲載している市場統計を見るとわかる。一方、スペインを代表するパンに色々な物を挟んだものを提供するファーストフードチェーン「パンス&カンパニー(Pans&Co)」の市場シェアーは僅かに4.4%である。元々スペインではファーストフードは成長し難い市場なのである。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身