上述の書簡が現れる以前に、コンソーシアムを構成しているコパサ(Copasa)とイマティア(Imathia)の2社が昨年10月22日付でコンソーシアム本部に送った書簡の中では、線路を敷くコンクリートの土台のサイズと構造が正しいく造られていないと言及され、その修正の為の費用をこの2社は負担しないと伝えていた。(参照:「
El Confidencial」)。更に、2社はメッカとメディナの間を結ぶ区間の砂の動きが充分に研究されていないことにも触れたという。
高速列車は砂丘を横断し、そして石に砂が堆積した砂漠も通過するが、そこでは風の動きで砂が猛烈なスピードで移動して堆積する。128.88kmの地点からコンクリートの土台になるが、そこから高さ5メートルの防禦壁を設けて砂の侵入を防ぐことになっている。しかし、まだ建設されていないその防禦壁が現状の堆積する砂の量から見て果たして 役に立つか否か疑問が生まれたというのだ。
事態の深刻さを鑑みて専門調査期間イネコ(Ineco)が問題とされている117-227km地点の区間1620平方mの砂漠の状態を調査し、1年前にその最初の調査報告がコンソーシアムに渡されたという。それによると、建設予定になっている防禦壁では砂の侵入を防ぐには不十分であるという調査結果になったという。
コパサとイマティアが指摘しているように充分に事前の調査が実施されていなかったということになる。そしてその調査書がコンソーシアムに渡されたのは1年前ということは、既に建設工事が進められている最中に渡されていたことになる。工事を開始する前に充分に調査したのではないのだ。この点についてスペイン電子紙『El Confidencial』は〈受注する前に充分な調査を進めることは控える傾向にある〉と指摘している。何故なら、その後、〈受注を他社にもって行かれると、調査に費やした費用がまったく無駄になってしまうからだ〉と言及している。
しかし事前の現場調査が不十分だと今回の双方の契約のように、スペインコンソーシアムが完成後も12年間そのメイテナンスを負担することになっていることから、現状の儘だと、砂漠の砂を除去する作業をコンソーシアムの負担で12年間続けて行かねばならないかもしれない。
2月16日にはスペインの国王フェリペ6世がサウジを公式訪問することになっている。それまでにスペイン国家の面子にかけてこの問題を解決しておかねばならない。なにしろ、今年末が完成予定になっているのだ……。
<文/白石和幸 photo by
Talgo spain >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身