北朝鮮水爆を中国ではどう報じられ、人々はどう思っているのか?

平壌駅前の大型テレビで歓声を上げる人々を一面で伝える7日の『新聞晨報』(上海)

 北朝鮮が6日に実施、発表した水爆実験を隣国、中国ではどのように伝えられたのか。  中国中央電視台(CCTV・国営放送)は、日本とほぼ同じタイミングで「北朝鮮東北部で人工的な揺れを観測、核実験実施か?」と伝え、北朝鮮が水爆実験を発表した北朝鮮時間午後12時(中国時間午前11時半)には、「北朝鮮が初めての水爆実験を成功させたと発表」と速報で伝え、関心の高さを示した。  一方、中国外交部報道局の華春瑩副局長は、6日の定例会見の冒頭、開口一番に「核実験に断固として反対する」と強く反発する声明を出すなど不満を表明した。  翌7日には中国株式市場が7%下落を記録し、取引停止になるなど水爆実験による周辺国の不安懸念が下落要因の1つとなるほど中国経済にダメージを与えた。  同じく7日の中国の新聞では、一面を金正恩第一書記が水爆実験への最終命令書へ署名をしているとされるカラー写真が飾るなど北朝鮮の狙い通りの話題作りに成功した。

一般の中国人はクールな反応

6日午後に水爆実験成功を発表した朝鮮中央テレビについて報じる中国CCTV

 それでは一般の中国人はどのように思っているのだろうか。実施直後の6日に昼に遼寧省大連の中国人へ聞いてみると少数民族である朝鮮族以外はニュース自体を知らないか、「ああ、やったようですね」など反応は薄い。  新聞のトップを飾った翌7日に上海で同じ質問をすると、「またかって感じです」「遠い国なので影響はないでしょう」「上海経済がよくないので北朝鮮にかまっている余裕はないですよ」などの意見が聞かれた。  実験が実施された北朝鮮豊渓里(プンゲリ)は、大連や上海からは遠く、震度3の地震が記録された隣接する吉林省くらいしか地理的な脅威は感じていないようだ。  今後の焦点は、中国が北朝鮮への制裁を行うのかだが、大連で韓国と取引する貿易会社の代表は、「現在、中国と韓国は蜜月関係にあります。そのため韓国に配慮して形式的な制裁を行う可能性はあるでしょうが、中国と北朝鮮との経済格差は100対1と言われ、もしも中朝貿易が全面停止しても中国にはまったく問題はないでしょう」  また、中国人の海外留学紹介をする会社関係者は、「今の中国は、もはや1国では成り立たない状態にあり、たとえば、農産物の輸入率は年々高まっています。バナナの多くはフィリピン産ですし、中国人に人気のサーモンも100%近くがノルウェーなど北欧諸国から輸入しています。昨年は、習近平国家主席のイギリス訪問で、中英関係は、黄金時代を迎えたなど言われていますし、中国政府はアフリカ諸国への投資や援助も強化しています。特に国連安保理の常任理事国であるイギリスから制裁へ賛同するように求められる可能性は高く、もし、求められたら両国の関係を考えて、賛同せざるを得ないのではないでしょうか?」と語る。

中国首脳陣の腹の中は?

大気汚染で霞む1月2日の北京天安門広場

 8日の定例会見で、華春瑩副局長は、「金正恩第一書記へ誕生日祝賀を送ったのか?」をと問われ、「私は知らない」とピシャっと答えるなど、中国は北朝鮮との関係悪化を演出している。しかし、中国は、今回の北朝鮮による水爆実験を近年、実効支配を強めている南沙諸島をめぐる周辺国からの反発や反中ムードを吹き飛ばすチャンス到来とらえていという見方も否めない。  もし、中国がここで北朝鮮に対して強いリーダーシップをとり、中国が望む対話による解決へ導くことができれば、中国の思惑通りに進んでいくのであろうが、果たして、そう思い通りに行くのだろうか……。 <取材・文/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma