消費税8%が日本経済に与える影響とは?

4月1日から消費税が8%に上がった。各企業が一斉に値上げを行うなか、価格を上げたくても上げられない人々が存在する。ここで値上げしないとコストが増大して経営が危うくなるが、値上げすれば消費者や取引先は離れてしまう……。

消費税8%が日本経済に与える影響とは?

永濱利廣氏

永濱利廣氏

 さまざまな業種の現場で消費増税に悲鳴を上げる。では日本経済全体で考えると、今回の増税はどんな影響を及ぼすのだろうか。  第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣氏が語る。 「短期的には確実に消費は冷え込むでしょう。また、企業間での格差が広がるのも間違いない」  すでに多くの業種では、円安による輸入費の増加、原油など生産コストの高騰、消費者のライフスタイルの変化など多くの理由から、根本的に事業を見直す必要に迫られている。今回の増税を機に、変化に対応できる企業とできない企業との差がますます広がると永濱氏は見る。  やはり、アベノミクスの効果は泡と消えてしまうのか。 「そう判断するのは早計です。春闘のベアが異例の上げ幅で実現したように、景気は確実に上向いてきている。消費税が5%になった’97年とは違い、駆け込み需要も想定より低そうです。中小企業向けの規制緩和も進んでおり、政府系金融機関が低金利で融資する『セーフティネット貸付』などは、前回の増税時にはなかった対策です。さらに建設業やサービス業などを中心に人手不足の売り手市場になっている。こうした現状を考慮すれば、消費の冷え込みは一時的で、長期的には景気は腰折れしないと予想できます。ただ繰り返しますが、ギリギリの状態でやり繰りしてきたような企業の淘汰は避けられないでしょう」  企業にとって次なる試練は、来年10月に控える10%への再増税だ。しかし、必ずしも既定路線ではないと永濱氏は言う。 「年明けには統一地方選挙があるので、景気が悪くても上げるという判断はない。10%の成否を握るのは、7~9月期の経済成長率です。つまり、そのタイミングで一旦冷え込んだ消費を喚起するため、追加の景気対策を前倒しで行う可能性が高い。8%の増税がツラいと嘆いている事業者は、何とか夏まで持ちこたえれば、少し明るい兆しが見えてくるかもしれません」 【永濱利廣氏】 第一生命経済研究所主席エコノミスト。著書に『日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門』(東洋経済新報社)、『男性不況』(同)など 取材・文/小山田裕哉 加藤カジカ 高島昌俊 古澤誠一郎
日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門

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