「予想されていたがタイミングが謎」北朝鮮専門家は“水爆実験”をどう見たか

今年の正月の北朝鮮は新型地下鉄が開業するなど平和な雰囲気だったので水爆実験は意外だったという

 6日、日本時間午前10時半に北朝鮮で人工的な地震が検知された。そしてその2時間後、北朝鮮時間の12時に朝鮮中央テレビは、特別重大報道として同国初の水爆実験に成功したと発表した。  中国でもいち早く速報で伝えられ、実験場から近い中国吉林省では早退させる学校もあると伝えるなど影響が出た。  記者は、2016年元旦を北朝鮮で迎えたが、毎年、北朝鮮国民に暗記が強要される金正恩第一書記による元旦の「新年の辞」にも核実験を匂わせる言葉はなく、平壌でもそのような雰囲気は感じられず、まったくの予想外だったと言える。  今回の水爆実験については、専門家の間でも見方が分かれており、アメリカを念頭に置いた国際社会への示威行動だという説や、今年5月に約36年ぶりに開催される労働党大会へ向けての国威発揚だという説、8日が金正恩第一書記の誕生日だったため生誕祝いという説など様々な見方が出ている。

講演中の宮塚利雄氏(Public Domain)

 朝鮮半島研究家で北朝鮮情勢に詳しい宮塚コリア研究所(山梨県甲府市)代表の宮塚利雄氏は、水素爆弾実験自体は予測はできていたが、このタイミングでの水爆実験実施は謎だと語る。 「北朝鮮の今回の水素爆弾実験は予想されていました。金正恩第一書記は昨年12月10日に『平川革命史跡地』を現地指導した時に、『わが国が水素爆弾の巨大な爆音を響かせることができる強大な核保有国になることができた』と話し、『水爆を保有している』ことを知らしめていたのです。これに対しアメリカや韓国は『北朝鮮にそのような技術はない』と否定しました。ただ、1月1日の『新年の辞』でも核開発についての言及がなかったので、今回のタイミングでの水爆実験は予想していませんでした。  そんな中で、北朝鮮が今回、水素爆弾実験を行った狙いを考えるとすると、対外的にはアメリカを北朝鮮との対話のテーブルに導くことにあるのではないかと思います。北朝鮮の外交の最大の懸案はアメリカと朝鮮戦争における休戦協定を平和協定に変えることでしたが、アメリカはこれまで北朝鮮による『弱者の恫喝』であるミサイルの発射実験や核実験を行っても、対話に応じてこなかった。今回の水素爆弾実験はアメリカの対北朝鮮政策に少なからずの影響を与えることは事実でしょう。また、国内的には国威発揚と金正恩政権に対する忠誠心を人民に喚起させたという効果はあったはずです。もっとも、アメリカなどは『今回の実験は失敗した』『爆弾規模が小さかった』などと否定的な見方をしていますが」  現時点では、周辺国による制裁は発表されていないが、心象悪化による観光へのダメージが懸念される。  年末年始の平壌カウントダウンツアーで訪朝した欧米人は100人近くにのぼり、現地ガイドによるとこの数年は、敵国であるはずのアメリカ人の訪朝者も増えているなど日本人以外の外国人観光客は年々増加傾向を見せていた。また、平壌や板門店に近い世界遺産がある開城(ケソン)などですれ違う子どもたちからも笑顔が見られたり、サッカーをしている少年たちを見かけるなど、多少ではあるが北朝鮮人たちの生活も向上したように感じていただけに今回の水爆実験が北朝鮮へ今後、どのような影響を与えるのか注目される。 <取材・文・撮影/我妻伊都 TwitterID/@ito_wagatsuma> 宮塚利雄●みやつかとしお 宮塚コリア研究所代表。元山梨学院大学教授。北朝鮮グッズの国内有数のコクレターとしても知られる。主な著書に『北朝鮮・驚愕の教科書』(宮塚寿美子と共著)、『北朝鮮観光』「がんばるぞ!北朝鮮』『アリランの誕生』『日本焼肉物語』『パチンコ学講座』など。 2015年12月5日に公式メールマガジン『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』を創刊。http://www.mag2.com/m/0001670237.html