不動産投資ブームによる家賃高騰も収束!? バンコクの賃貸事情

日系駐在員が暮らすレベルの住宅には大体プールやジムがついている(シタディーン・シーラチャー)

増える在タイ邦人。住まいの確保はどうすべき?

 バンコクは2006年に発生したクーデター以降政情不安が続いている。その間にも多くの日本企業が被害に見舞われた大洪水も発生し、一時期は外国企業がタイを離れるのではないかと懸念する声がよく聞かれた。  しかし、少なくとも日本人は逆に増え続けている。日本の外務省から発表されている在タイ邦人数は64285人(2014年10月1日時点)。2006年から2.4万人も増え、2013年と比較しても5000人ほど増加している。日本企業のタイ進出も続いており、駐在員として派遣される日本人とその家族が増えていることも影響しているだろう。地方は単身赴任ばかりだが、バンコクだと生活インフラや治安が安定していることから家族帯同で来ることが多い。  バンコクで暮らす場合、赴任した駐在員は自分で住まいを確保しなければならないことが多いという。地方だと会社側が寮やアパートを確保しているが、バンコクではある程度企業イメージを損なわないような規定はあるものの、駐在員の裁量に任されているようだ。  バンコクだとコンドミニアム(マンション)の分譲オーナーか、掃除などを請け負うサービスアパートの管理会社と契約する。ただ、タイ語もしくは英語でのやり取りになるので、バンコクの右も左もわからない上に着任直後でやることがたくさんある駐在員にはハードルが高い。そこで強い味方となるのが不動産仲介業者だ。日本人経営か日本人担当者が常駐する仲介業者があり、部屋の斡旋や契約の手伝いなどを依頼することになるわけだ。  こうした日本人の仲介業者を通じても、商慣習の違いなどから戸惑うことが少なくないのがタイでの部屋探しだ。そこで、日本と異なる点や注意すべきトラブルなどのポイントを挙げてみよう。

1:大家とのトラブルも多いので、仲介業者を利用すべし

単身者用のサービスアパート(シタディーン・シーラチャー)

 不動産仲介業者を利用しても、部屋探しをする賃借人は一切費用がかからないのでとにかく仲介業者は利用したほうがいい。  なぜ手数料がかからないかというと、仲介業者にとって正式な意味での顧客は不動産所有者側、つまり賃貸人だからだ。タイには礼金がなく、賃借人は家賃と保証金を賃貸人に支払い、仲介業者はオーナーから数か月分の家賃を手数料として受け取る仕組みになっている。  もちろん、かつてはタイの不動産仲介業者は物件を紹介して、契約が成立したら仕事が終了、なんてこともあった。その結果、契約後のトラブルは賃借人とオーナーで解決するのが一般的だったのだ。  バンコクも住まいのトラブルは日本同様あり、主に水回りや電気関係の故障、それに関係して退去時の修繕費に関することが多い。この修繕費については、日本でも揉めることが多いところだが、タイでは入居時に支払った保証金はほぼ全額が返ってくるのが普通だ。しかし、悪質なオーナーだとなんらかしらの文句をつけて修繕費を引いたり、外国人だからと返金を一切拒否することもあり、特に日本へ帰国する駐在員は泣き寝入りするしかないことも多かったのだ。  こうした状況を受けて、最近は仲介業者も変わってきた。 「最近では仲介業者も入退去時の部屋確認に立ち会ったり、保証金の返金までフォローするようになっています」  そう語るのはバンコクで賃貸物件仲介を行う「石川商事」の石川貴志社長だ。バンコクの日系仲介業者は優に50社を超えるとも言われ、アフターサービスなどを行って競合他社と差をつけなければならないため、必然的に手厚いサービスを行う業者が増えてきたのだ。

2:日本と違い貸し手優位なので大家の見極めが重要

「今の傾向としては、日系企業が個人オーナーの物件を嫌うこともあり、弊社もサービスアパートの紹介が増えています」  前出の石川氏が言うように、タイと日本では商習慣が違い、売り手が買い手より強い立場にいる業界が多い。中でも不動産関係は賃貸人が富裕層であることが多いため、誰よりも自分が偉いと思っているタイプが少なくない。そんな強気のオーナーの前では賃借人の方が立場は弱くなってしまうわけだ。特に個人オーナーの場合は小遣い稼ぎに賃貸業をしていて、一部の悪質なオーナーは脱税しながら稼ごうとしている。そんな人物は法外な修繕費を請求したり、家賃の数か月分になる保証金を返還しないなどの非道を行うわけだ。そのため、日系企業では、社員の住まいを個人オーナーから借りることを避けるように言い始めている。  もし仮に個人オーナーから借りる場合は、バンコクにおいて部屋探しの秘訣はオーナーの人格を見極めることが必須となるのだ。
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日本の「常識」は忘れて部屋を探すべし
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