外食産業衰退で業界再編。コンビニ戦争の舞台裏

田村祐一

田村祐一氏

 勝ち組と負け組の差が鮮明になってきた外食産業だが、そのことにはコンビニの快進撃も少なからず影響しているようだ。同業界に詳しいフェアトレードのアナリスト・田村祐一氏は次のように指摘する。 「かつてのコンビニは便利さが第一で、弁当やホットスナックの味はイマイチでした。ところが、最近はファストフード店で提供されるものと遜色のないレベルに向上しています。しかも、飲食スペースを設ける店舗も増えたことから、ファストフード店からコンビニへと客が流れているのです」  セブンイレブンが先鞭をつけた淹れ立てコーヒーやファミリーマートのファミチキなど、確かに最近のコンビニは商品のクオリティーが格段に向上している。加えて、「PontaやTポイント、nanacoといったポイントを貯められることも“呼び水”となっている」(田村氏)ようだ。  味わいの面で十分満足できるなら、食べ物以外の買い物もできるコンビニに足を運んだほうが何かと便利に決まっている。ただし、こうしたコンビニ業界の隆盛はあくまで大手3社に限った話らしい。日本経済新聞社が実施した「コンビニ調査」によれば、14年度に同業界の国内市場は10兆円を超え、そのうち大手3社が約8割のシェアを握っているという。

数年後に中堅以下は全滅してしまう!?

「なぜなら、店舗網の拡大スピードにおいて4位以下は太刀打ちできないからです。大手3社は弁当などのクオリティーでも大きく差をつけていますし、大手メーカーとタッグを組んで良質のPB(プライベートブランド)商品を開発できるのも強みでしょう。PBのポテチが実はカルビー製だったりするわけです」(田村氏)  大手3社間も競争が熾烈だ。セブンイレブンはJR四国やJR西日本と提携することで、手薄だった中四国エリアの店舗網をオセロゲームのように一挙拡大。これに対し、ファミマとローソンは中堅コンビニを買収や提携を通じて取り込む戦略で対抗している。 「数年後には、中堅以下が全滅しているかもしれません。その後は大手3社でパイを奪い合う泥仕合となりそうですが、その中でも頭一つ抜け出しているのは、やはり商品開発力で優位に立つセブンイレブンですね」(田村氏)  国内市場の拡大が見込めなくなったとしても、アジアをはじめとする海外市場はまだまだ開拓の余地が大きい。今後、大手3社の強烈なバトルはグローバルな舞台へとシフトしていくのは間違いない。

【コンビニ3社[店舗数・株価上昇率・業務提携&統合]の比較】

◆セブンイレブン セブンイレブン◎店舗数:約1万8000店 ◎株価上昇率:約30.27% ◎業務提携&統合 JR四国に続いてJR西日本とも提携を結ぶ。駅構内にあるキオスクや、JR西日本の子会社が運営するコンビニ・ハートインをセブンイレブンに転換中。転換後の売上は激増中だ。 ◆ファミリーマート ファミリーマート◎店舗数:約1万1400店 ◎株価上昇率:約24.31% ◎業務提携&統合 東海地方が地盤の中堅コンビニ・ココストアの買収を発表。サークルKサンクスを傘下に有するユニーGHDとも統合交渉中で、実現すれば合計店舗数がセブンイレブンと同規模に! ◆ローソン ローソン◎店舗数:約1万2200店 ◎株価上昇率:約29% ◎業務提携&統合 ’14年12月に中国地方を地盤とするポプラの発行済み株式5%を取得して資本・業務提携を結んでおり、さらに神奈川県が地盤のスリーエフとも資本業務提携交渉を進めている。 ※株価上昇率は’14年11月27日と’15年11月27日の終値から計算 【田村祐一氏】 あらゆる業界を横断的にリサーチする株式アナリスト。大手証券を経て、投資情報の提供などを手掛けるフェアトレードに所属。マネー誌などにも多数寄稿中。