ヨドバシ快進撃を支える3つのポイントとは?
2015.12.31
ヨドバシカメラの快進撃が止まらない。2015年3月期の業界大手5社の決算では、プライスリーダーのヤマダ電機が1兆6643億円の売上で頭一つ抜けてはいるが、経常利益をみれば355億円止まり。逆にヨドバシは競合他社の倍近くの511億円に。実績を残した勝因について、家電評論家の熱田浩司氏が次のように分析する。
「ヤマダ電機、ビックカメラ等はEC部門をないがしろにしていました。そんななかヨドバシだけは粛々とIT化を推進し、実店舗と通販サイト『ヨドバシ.com』のボーダレス化に成功。店鋪で扱う約300万点近い商品をネットで購入できるようになりました。また、サイト上で在庫の有無、店舗の在庫状況、当日配送の可否や配達可能日がわかるようになっているのも、ユーザーから好評です」
ヨドバシ.comのポイントは家電・日用品などは10%、書籍は3%だが、Amazonや楽天に比べた還元率の高さもユーザーの心を捉えた。さらにヨドバシは’15年6月にネットと実店舗を統合する“オムニチャネル化”を推進。会員登録しているユーザー対象に、店鋪でのクレジットカード払いも従来の8%から10%に引き上げ、90日間保証のお買い物プロテクション、持ち帰りが難しい商品の無料配達など、続々と新サービスを投入した。
「またヨドバシは9月から、注文を受けて最短6時間で商品を届ける『エクスプレスメール便』を始めました。現在は東京都内の中野、杉並、新宿の3区だけですが、この理由は同社に大都市駅前の巨艦店があるからです。商品は店から運ぶから早い。また対象外の地域でも、指定商品に限り注文当日のお届けが可能です。今後、店舗数が増えるほど対象地域はどんどん広がっていくでしょうね」
ヨドバシの実店舗はショーケースであり、物流倉庫であり、修理センターでもある。だからこそAmazonのように宅配業者を挟まないことで、迅速なサービスが実現したのだ。実際に中野区在住の記者がヨドバシ.comを使い商品を注文すれば、専門のバイクに乗った店員が僅か4時間で自宅に配達。梱包もしっかり小分けにされており、文句なしであった。
「このスピードで一品からでも配達料金無料・日時指定無料で届けてくれるのは嬉しいポイント。さらに家電量販店の通販サイトならではの強みもあります。リモコンなどの付属品、また、補修部品の一部も店鋪に在庫として持っているので、即日発送してくれます。電気店の店員さんが運んでくれるから取り付けなどの説明もしてくれますし、頼めば不要な箱なども持ち帰ってくれます。そして商品で気になる点があれば、配達員のいる店舗に行けばいい。これが次の買い物に繋がるわけです」
実店舗でも購入するメリットはある。ヨドバシでは9月16日から全22店舗で無料Wi-Fiスポット「ヨドバシ フリーWi-Fi」サービスを開始。店内でのスマートフォン利用を自由化し、商品の撮影もOKに。バーコードを利用した商品情報の確認や他社との価格比較もできるようにした。
「つまり、店鋪で購入する時は、店員の前で価格検索して、その場で交渉ができる家電量販店ならではの良さも残している。ヤマダなんて携帯で撮影するだけで止められてましたからね(苦笑)。他の量販店もオムニチャネル化を進めていますが、やはりパイオニアであるヨドバシには一歩追いつけない印象です」
他の家電量販サイトも、デザインはほぼヨドバシ.comの丸パクリ状態になっている現状だ。ヨドバシの一人勝ちではあるが、難点をあげるならば、まだ食品・日用品などの商品数は少ない点。しかしこれも、ヨドバシでは’16年には1000万点の取り扱いを目標としているという。
「食品等はセブン&アイグループなど大手がいますから、わざわざヨドバシで買う必要もないかもしれません。ただ、家電やオモチャならばヨドバシ一択だと思います」
ヨドバシは10月29日に中部・東海エリア初のヨドバシカメラ「マルチメディア名古屋松坂屋店」がオープンし、配達料金無料でご注文当日お届けサービスを愛知県全域で開始。さらに川崎市にある稼働中の物流センターを増設するなど、その勢いは益々加速するばかり。JCSI(日本版顧客満足度指数)調査のネット通販部門では、顧客満足度で現在2年連続でヨドバシが1位。11月にAmazonも、プライム会員向けに「1時間以内に商品を届ける」という新サービスを始めたが、はたして、猛追するヨドバシを抑えることはできるのだろうか?
【熱田浩司氏】
エム・クルーズ所属。家電雑誌を中心に、様々な媒体で活躍するAVライター。特に、テレビに関する造詣は深い。
ヨドバシが通販業界まで征する可能性も
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