エネルギー消費マイナス54%! 老舗かまぼこ屋の新オフィスビルの省エネぶりがスゴイ!
省エネ社会を実現するためには、建物のエネルギー消費量を減らすのが最も効果的だ。快適さをアップしながらエネルギー消費量を半分以下にする、そんな新世代のオフィスビルが誕生した。
徹底して省エネにこだわった新社屋を建設したのは、小田原・箱根で150年続く老舗かまぼこ屋「鈴廣」だ。一体どうやってエネルギーを削減しているのだろうか?
2015年9月から稼動をはじめたこの省エネビルの最大の特徴は、空調と給湯のシステムに井戸水を活用していることだ。小田原周辺には地下水が豊富で、それを活かして夏は冷房、冬は暖房の空気が部屋に流れるようになっている。
壁面は分厚い高断熱仕様なので、冷暖房は最低限しか必要ない。さらに外気は熱処理をしたあと水のフィルターを通して館内に流れるため、花粉やホコリを取り除いたきれいな空気だけが流れることになる。
照明にも工夫がされている。自然光から効果的に明かりを採る太陽光照明システムを17本設置。筆者が訪れた際は曇り空だったが、それでも仕事をするのに十分な明るさがある。オフィスビルや工場など、主に昼間に使われる場所にはうってつけだ。
屋上には40キロワットの太陽光発電設備を設置、売電せずに電力を自給している。蓄電池もあるので停電時も安心だ。この設備も合せると、年間通じて外部からのエネルギーへの依存はゼロに近い。このようなビルは「ゼロエネルギービル」と呼ばれている。
鈴廣は、このビルを建てる前から省エネ対策をいろいろと行ってきた。しかし設計段階から省エネにこだわって作ったのは、この新社屋が始めてとなる。鈴廣かまぼこの鈴木悌介副社長は、このビルを建てた理由をこう語る。
「エネルギーの話になるといつも『電気をどうするか』という話ばかりになってしまいます。でもそれ以外に使われないままになっているエネルギーがたくさんあります。井戸水の空調や太陽光照明はその一部にすぎませんが、こうした工夫をすることで、まだまだ省エネはできるということを伝えたいと思いました。技術的にも高価な設備は使っていないので、10年以内に設備投資は回収できるはずです」
鈴木氏がエネルギーの取り組みを始めるようになったきっかけは、5年前の東日本大震災だった。「もうあんなことは繰り返しては行けない。原発の分のエネルギーなら、今の技術を使えば簡単に削減できるはず」と考えたという。自然の力を最大限に活かして、5割以上のエネルギー削減を達成したこのビルの存在が、そのことを証明しているのではないだろうか。
<取材・文・写真/高橋真樹 著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など>
井戸水や自然光を最大限に活用した「ゼロエネルギービル」
エネルギーを見直せば、いまの原発分くらいの電力は削減できるはず
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)。昨年末にはハーバービジネスオンラインeブック選書第1弾として『「寒い住まい」が命を奪う~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』を上梓
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