加速するトルコのEU加盟。最大の問題はエルドアン政権の「ファシズム」だ
El Confidencial』は〈2009年から2000人のジャーナリストが解雇され、インターネット上で5万ページがブロックされた〉と報じた。更に、〈強迫や押収という手段を使って、トルコ政府は全てのテレビ局をコントロールしようとしている。国営テレビTRTは政府の報道役になり、民放も一部例外を除いて、政府に好意的な報道を行ない、批判は控えるという方向だ〉と指摘した。ユネスコによると、〈85%のトルコ国民の唯一の情報源はテレビだ〉という。テレビをコントロールすれば国民を支配出来るということだ。
また、11月30日の『CNN』は〈2013年に、記者団保護委員会が「トルコで収監されているジャーナリストは40人、他のどの国よりも多い」と指摘したこと〉を報じている。そして〈それ以後、減って現在10人が収監されている〉と言及した。さらに、1924年創刊のクムフリエット紙のデュンダル編集長とアンカラのグル支局長が〈政治的及び軍事的目的で国家の安全に関わる情報を公開したという容儀で逮捕された〉ということも報じている。同紙がwebで公開したのはトルコ諜報機関がシリアに武器を供給しているのをビデオ映像で暴いたものだ。映像には警官と民間人がトラックに荷物を積む場所で薬箱と思われる箱のネジを開けると、その中に追撃砲の弾薬がいっぱい詰まった状態が映され、彼等が〈「イスラム国に送られるものであろう」〉と語ったことだ。この映像はwebから直ぐに削除されたが、エルドアン大統領は〈「この情報を公開した者は高い代償を払うことになる」〉と国営放送TRTを通して発言し、ダウトール首相と同様に〈トルクメン人グループに送るものだ〉と繰り替えし述べたという。彼等に有罪という判決が下されれば無期懲役の刑が課せられることになるという。
前出の『El Confidencial』によれば、トルコの代表紙のひとつ『Sabah』は〈社会民主傾の紙面であったが2010年に経営者が代わり、今では政府の前衛的な新聞になってしまった〉という。
トルコのメディアは政府にを批判する報道に走れば、政府からの弾圧を覚悟せねばならないことになってしまっている。エルドアン大統領の徹底した「ファシズム」はいつまで続くのであろうか。
<文/白石和幸 photo by Presidencia de la República Mexicana on flickr(CC BY 2.0>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
EU加盟を望んでいるトルコ。ヨーロッパに絶えることなく流入する中東からの難民を食い止める為にEUは、ここに来て初めて多くの難民の通過国となっているトルコの協力を求めている。トルコに避難している難民は200万人以上と言われている。主にシリアからの難民だ。EUはトルコが難民のヨーロッパへの流入を抑えることと引き換えにトルコのEU加盟を推進すると約束したわけだ。
しかし、加盟に絡む問題として、トルコには言論と報道の自由がないということがEU内でも問題視されている。
国境なき記者団が公表する「世界報道自由度ランキング」では、トルコは180か国の中で149位にランキングされている国である(ちなみに日本は61位である)。
トルコのメディアへの弾圧を伝えるべく10月31日付スペイン電子紙『しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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