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人民元の存在感が増している。国際通貨基金(IMF)は人民元を「特別引き出し権(SDR)」という準備通貨に採用することを発表。国際銀行間通信協会(SWIFT)も、人民元が貿易や対外投資などの国際決済に使われる通貨として、今年8月には日本円を抜いて第4位になったと発表している。経済成長の鈍化が懸念される中国だが、元がドル、ユーロ、ポンドに次ぐ“第4の国際通貨”に躍り出た格好だ。
「6月半ばをピークに上海総合指数が急落したのに伴い、中国人民銀行は8月に人民元の切り下げを余儀なくされたのですが、その影響で人民元の決済比率が高まった。そうでなくても、中国による元決済の規制緩和で元建ての取引が急増しているため、こうなることはある程度予想されていました」
そう解説するのは、フィスコ情報配信部の田代昌之氏。この現状を、投資家としてはどう考えるべきなのか。
「結論から言うと、何も変わりません。というのも、国際決済に使われる通貨は大半がドルとユーロ。人民元が日本円を抜いたといっても、国際決済に使われる通貨として、円や元が果たす役割なんて知れたもの。円が2・76%で、元が2・79%とわずかに上回っただけですからね。SDRにしても“名誉職”みたいなもので、実質的な意味はあまりないのです。中国経済の躍進は認めますが、ドルとの相関性がある人民元が独立した動きを示すようなレベルにまだないのです」
投資家目線からすると、相場で注視すべきはやはりドルの動きだろう。
「年内の利上げが焦点です。足元では10月に発表された雇用統計の内容が非常によくて、利上げの追い風となっています。金利を引き上げる可能性があることで、ポンド、ドルは買い、一方、追加の緩和が予想されるユーロ、円は売り、スイスフランはニュートラルという流れは、しばらく続いていくので、人民元が大幅に利下げされたり、1日に数%動いたりしない限りは、他の通貨が影響を受けることはないでしょう」
<取材・文/牧隆文>