現状はかなり大きい
世界の森林資源活用をリサーチしているRISIのレポートによると、2013年の日本の国民一人当たりの紙・板紙消費量は214.6㎏と世界でもかなり高い水準に位置している。これは樹齢30年の木を一人あたり年間4本伐採しているくらいの量だという。
デジタル化は進めども、いまだに「紙」はビジネスの世界でも必要不可欠であり、環境のことを考えたとしてもなかなか減らすためのアクションは起こしづらいし、リサイクルに回すにしてもコストがかかるのが現状だ。
しかし、12月1日にEPSONが発表した新しい装置はもしかしたらこうした「紙」の現状を根底から変えるものになるかもしれない。
その新しい装置とは、なんと不要になった紙を再生工場やリサイクル業者に委託することなく、自社内で再生紙を作れるという機械だ。
「PaperLab」と名付けられたこの機械は、使用済みのオフィス用紙をファクスやコピー機のソーターに入れるように投入すると約3分間でまっさらな再生紙にしてしまうというもの。
現状はかなり大きく、幅2.6×奥行き1.2×高さ1.8mとちょっとしたロッカー並の大きさ。しかし、従来はA4用紙を一枚作るのにコップ一杯程度の水が必要だったため排水設備などが必要だったものを、独自に開発した技術によって水なしで再生紙を作ることに成功し、その結果オフィスに設置可能な機器を開発できたのだ。
記者発表で配られたリリースも「PaperLab」で作られた再生紙。
まず当然ながら環境への負荷軽減だ。単純に再生紙を使うこと以外にも、さまざまな面でそれは言えるという。というにも、いままで紙を使ったら不要な紙は回収業者が集めて再生工場に回し、再生紙を作ってそれを企業が買って活用するというサイクルだった。しかし、自社内で再生紙を作ることができるようになれば、リサイクルの輪が小さくなり、回収された紙の運搬にかかるCO2排出なども軽減するのだという。
そしてコスト削減だ。外部業者に委託していた古紙回収や再生紙の購入コストなどもなくなるため、企業側としてもコストダウンできるのだという。
また、同社はもう一つのメリットを上げる。この機械は投入された紙を一瞬にして繊維レベルにまで分解してしまうため、従来はシュレッダーにかけても不安が残っていた機密情報保持が完全に可能になることもあるというのだ。
エプソンはこの「PaperLab」を中心としたビジネスを「スマートサイクル事業」とし、2016年に製品化を目指し、今後は機械のサイズも小型化させて、コピー機の横に置いても邪魔にならないサイズを目指すという。
もちろん、まだ現段階では先述したようにかなり大きな機械だし、販売価格も未定だ。加えて言えば、デジタル化、ペーパーレス化が進む中で、どこまでこの「自社内紙再生」といういまだかつてない市場が注目されるかは未知数だ。数年後にはどこのオフィスでも再生紙はコピー機横の機械で行うことになるか、注目していきたい。<文/HBO取材班>