2010年から始まったロシア人による不動産投資のブーム

 観光客が多いタイ。取り分け多いのは中国人で、パタヤでも中国語の看板が目立つが、そんな中国語とともにロシア語を併記した看板も増えつつある。  実は国籍別の統計を見てみると、ロシア人の入国者数は2014年で160万人と日本人よりも多いほどだ。しかも、ヨーロッパや南北アメリカ諸国のタイ入国者数で100万人を超えているのはロシアしかない。イギリスやドイツなどタイ好きが多い国でも90万人台に留まっているのを考えると「かなり多い」と言える。  一体ロシア人はなにをしにタイに来ているのか。  パタヤ警察でボランティアをしているイギリス人がこう証言する。 【中編】ロシア人はパタヤかプーケットを目指す

2010年から始まったロシア人による不動産投資のブーム

「彼らは不動産を転がしているんだ。パタヤのコンドミニアム(マンション)を買い漁り、転売や賃貸に回している。ただ、価格もだいぶ落ち着いてきているから、今はその数も減りつつある」  ロシア人による不動産投資ブームが2010年ごろに始まっており、ロシア人のタイ入国者数統計の推移と一致する。また、N氏も在住ロシア人の大半は稼ぎを不動産の価格変動に頼っていると言う。    しかし、あるホテルのロシア人従業員にパタヤにロシア人が多い理由を訊いたところ、意外な答えが返ってきた。 「パタヤにロシア人が多いですって? 今はほとんどいませんよ! タイ人気はもう終わったんじゃないかしら」  看板にロシア語は残れど、もうブームは終わって減りつつあるというのか? 確かに街中では目立たないのは事実だ。しかし、統計では今もロシア人は増えているのだ(2014年はクーデターなどの影響で全体的に減少傾向)。

レストランのテーブルにあった予約の札にもロシア語

 もしかしたらパタヤの不動産投資ブームは終わってしまい、それに伴いロシア人のタイブームも終わってしまったのか? それとも、同国人からすらもわからないほど馴染んでしまっているのか? はたまた、不動産投資ではなく、どこか違うところで暗躍しているのだろうか。  前出のN氏も、タイに知り合いのロシア人は少なく、ほかの人がなにをしているのかはあまり知らないと言う。  なんとなくコミュニティを作るタイに訪れる他の外国人と違い、それぞれがバラバラに活動しつつも看板にロシア語が併記されるほどには多かったロシア人。ロシアから程遠い南国のタイで見かけるロシア語の看板は、その「あまりよくわからない実態」とともに、どうにもミステリアスな雰囲気を醸し出しているのである。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)>