クレームを炎上させない、正しい初期対応マニュアル集

「クレーム」と聞くと、内心「ひぇっ!」と耳を疑い、平常心を失ってしまう苦々しい経験がある人も多いだろう。顧客対応を担う営業やコールセンター、サービス業関係者のみならず、知っておきたいクレーム対応のポイントがあるという。サービス業に特化した研修機関、グローイング・アカデミーの有本均学長に聞いた。

全ては初期対応にかかっている

謝罪 そもそもクレームは、お客様の商品やサービスに対する「期待」や「思い」の裏返し。期待通り、または期待を上回れば満足してくれるが、それを下回れば不満に感じ、大きく下回るとクレームになる。“グッドマンの法則”では、満足した客は5人に伝えるが、不満足だった客は10人に伝えるという。近年SNSへの投稿で大炎上に発展するケースも散見され、企業としては大打撃である。  悪質な場合を除けば、お客様だって進んでクレーマーになりたい人はいない。軽くたしなめるつもりで注意したのに、対応の悪さから問題が大きくなっていく。初期対応がしっかりしていれば、お客様も「今度からは気を付けて」という気持ちに切り替わるはずだ。  クレーム対応には3つのステップがあるという。 【1】感情浄化 【2】事実の相互確認 【3】再発防止の決意、適切な解決策への誘導 「感情浄化」は、お客様の感情をなだめる最も重要な初期対応である。最初に対応する人が迅速に、『不快な思いをさせてしまい申し訳ありません』『お待たせして申し訳ございません』と受け入れる姿勢を示すことがポイントだという。最初から『申し訳ございません』と全面謝罪するのは得策ではない。何に対して謝っているのかが伝わらず、「早く終わらせたいんだな」と感情を逆なでしかねない。聞く姿勢を示した後で、しっかりとお客様の言い分を聞き、事実確認をすることができれば、8割のクレームは大事にはならないという。

逃げたい気持ちをぐっと抑える

 有本氏はマクドナルドのハンバーガー大学やユニクロ大学を担ってきたが、自身がマクドナルドの店長時代、クレーム対応に際して心がけていたのは「気持ちが逃げないようにする」ことだという。スタッフとしてはその場から逃げたい気持ちはどこかにあるものだが、気持ちが逃げるとその場を取り繕おうとしてしまい、それが言動にも表れてしまう。そんな気持ちで謝罪しても相手には伝わらず、かえって問題をこじらせてしまう。逃げの姿勢が見えてしまうNG項目を下記にあげる。 <クレーム対応 NG項目> ・お客様の話をさえぎる ・「すみません」、「はい」を連発 ・弱そうな声や態度 ・担当ではないと言う ・「最初に言ったはず」「説明書にも書いてある」等を先に言う  逃げずに真摯に事実と向き合う姿勢と、お客様が自社のために割いて下さった手間と時間に感謝する姿勢で対応することが重要だ。

ロールプレイングでしぐさや癖を確認

 謝罪は言葉だけではない。お客様の話しを聞くときの表情やしぐさや姿勢など、どう見えるかも重要である。どれだけ真摯な気持ちで謝っていても、伝わる態度になっているかを確認しておこう。クレーム対応は経験を積むことで上達するが、OJTだけで学んでいくことは難しい。「ロールプレイングなど疑似体験を通じて練習し、学ぶことができる。ロールプレイングで照れたり恥ずかしがったりしてしまう人は、いざ本番でも同様にふるまってしまうことが多い。緊張感の高い対応だけに、練習することでいざという時に自信を持てることが狙い」という。  クレームは企業にとって「リピーター獲得のチャンス」でもある。内部では気づきにくい課題をわざわざ指摘してくれた貴重な意見としてとらえ、サービスや商品の改善につなげて、顧客満足度を高める機会にしたいものだ。  ちなみに、クレーム対応で最も効果があり、よく使う言葉は「ありがとうございます」だという。<取材・文/HBO取材班>