フリーゲージトレイン開発難航から見える新幹線建設の“無謀”

フリーゲージトレインの2代目試作車両(現在は3代目)。photo by iba / PIXTA(ピクスタ)

 このところ、建設ラッシュが続いている新幹線。今年3月の北陸新幹線に続いて来春には北海道新幹線が開業予定だ。さらに、北陸新幹線の敦賀までの延伸工事、北海道新幹線の札幌までの延伸工事もすでにスタート。そして、九州でも長崎に向けて九州新幹線長崎ルートの建設が佳境に入っている。  九州新幹線長崎ルートは、すでに開通している九州新幹線鹿児島ルート(以下鹿児島ルート)の新鳥栖駅から分岐して長崎に向かう新幹線。2022年度の開業を目指して工事が進められている。が、そんな新幹線の建設に暗雲が立ち込めている。長崎ルートの前提となる“フリーゲージトレイン(軌道可変電車)”の開発が頓挫寸前なのだ。  フリーゲージトレインは、その名の通りゲージ、すなわちレールの幅にとらわれずに走ることのできる車両のこと。一般に、JRの在来線のレール幅は1067mmだが、新幹線は1435mmとなっている。そのため、新幹線と在来線の直通運転ができないのだ。秋田・山形新幹線では在来線のレール幅を改めることでこの問題をクリアしている。そして、長崎ルートではこのフリーゲージトレインによって在来線との直通運転を目指している。  具体的には、新鳥栖~武雄温泉間は既存の在来線である長崎本線を走り、武雄温泉~長崎間は1435mmの新幹線線路を走るということ。1435mmで260km/hでの運転が可能な新幹線線路のことを“フル規格”と呼ぶが、在来線とフル規格新幹線の双方を走れるフリーゲージトレインを使うことを目指しているのだ。そして、このフリーゲージトレインの開発が滞っているのだ。  専門誌の記者は言う。 「フリーゲージトレインは鉄道・運輸機構が中心となって開発が進められているのですが、昨年10月にはじまった耐久試験走行がわずか1か月で中止されています。車輪幅が変わる部分の機構に関するトラブルとのことで、いまだに試験走行再開の目処は立っていないようです。この秋には開発続行断念かという悲観的な報道も出ています。本当に断念されれば、すでに建設が進んでいる長崎ルートは無用の長物になってしまうんです」
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開発続行か、全線フル規格化か
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