ツイッター組長[投資の掟]を語る!

山口組のお家騒動では「中の人」としか思えないツイートを連発、2万7000人超のフォロワーを持つツイッター組長。構成員18人ほどの組長である彼は、投資家としての顔も持つ。波瀾万丈の投資家人生について聞いた――。 【ツイッター組長とは?】 アカウントは@6yamaguchigumi。休止状態だったtwitterを山口組が分裂する6日前に再開、独自情報を続々と公開し、精度の高さと速報性で一躍注目を浴びる。暴力団関連のツイートが注目されがちだが、経済ニュースやネットの炎上案件について言及することも多く、その語り口は鋭い。愛猫家で、猫の画像も頻繁に投稿している

話題沸騰の御仁に独占インタビュー敢行

ツイッター組長 山口組の分裂という異常事態を読み解くニュースソースとして、ツイッター組長の存在は貴重だ。11月9日には山口組に続き稲川会の分裂をリアルタイムでツイートするなど、速報性と内容の濃さは他の追随を許さない。  それゆえ、ツイッター組長をフォローしては日々ウオッチしていたのだが、次第に暴力団関連以外のツイートに興味を惹かれるようになった。最新の金融情報に通じ、投資家として相当レベルが高い雰囲気がうかがえるのだ。  暴力団組長だし、壮絶な投資家人生を歩んでいるに違いない――そう思った記者は、恐る恐るインタビューを申し込んでみた。すると、まさかの快諾! 以下、ツイッター組長が自身の経験から得た“投資の掟”を、一問一答でお届けしよう。

大学中退、就職、起業そしてヤクザの道を歩む

――簡単な経歴からお聞かせください。 組長:兵庫県神戸市出身です。父親はサラリーマンで、転勤のため中学3年のときに上京しました。大学は経済学部に行ったのですが、2年で中退しています。 ――大学をやめて、ヤクザに? 組長:大学時代、日本は好景気に沸いていました。先輩が大阪で不動産会社に勤めていたのですが、羽振りがよくて憧れの存在で。その先輩から「大学やめてウチで働かないか?」と誘われ、悩んだあげく、そうすることにしたんです。働きだして間もなく、バブル景気がやってきました。仕事で覚えた不動産取引の知識を使って個人でも土地を買うようになって……最初に買ったのは3000万円の土地で、わずか1か月後に4500万円で売れました。「買えば値上がりする」のが当たり前。面白いように儲かり、2年で資産が3億円になりました。 ――最初はサラリーマンだったんですね。では、なぜヤクザに? 組長:バブルがピークを迎える頃、今度は東京の証券会社で働いていた先輩から「投資会社を興すので一緒にやらないか」と誘われ、私は4人の仲間とともに会社を持つことになったんです。  先輩の人脈もあって、顧客は暴力団の親分から政治家、芸能人、銀座のママさんまで幅が広かった。会社は面白いほど儲かり、顧客も増えて運用資金も膨らんでいきました。ただ、そうなると株取引の手法も荒っぽくなっていきました。仕手相場にも関係するようになったのです。1989年、(※1)加藤暠(あきら)が仕掛けた仕手戦に参加して失敗、あっさりパンクしました。 ――会社がパンクして、後始末は大変だったのでは? 組長:顧客の人たちには、会社全員で損失の補填をしました。このせいで当時25歳くらいだった私は、個人資産5億円を失うだけでなく、逆に2億円ほどの負債ができました。突然の倒産と借金で地獄のような日々が始まり、死ぬことまで考えていたときに助けてくれたのが、仕事の関係で知り合った最初の親分でした。  会社倒産で抱えた個人負債のなかには、暴力団関係から借りたものもあり、凄まじい取り立てが続いてましたが、それを肩代わりしてくれたのが、この親分から命を受けたフロント企業だったのです。こうして、私のヤクザ人生がスタートしたわけです。

銀座で飲んでいる間に8億円を溶かしていた!

――ヤクザになってからも、投資は続けたのですか? 組長:ヤクザとして活動するようになってから市場で現物株を買うのがバカらしくなりました。なぜなら、企業から直接株を買う(※2)「新株引き受け、相対取引」で市場を通さず割安で株を手に入れることや、企業から直接情報を得るインサイダー取引を覚えたからです。現実にヤクザは経営者、弁護士、会計士などから内部情報を得て株取引を行っています。  こういった経緯を踏まえた上で私が出した株取引の結論は、 [1]株は市場で買うものではなく、企業に発行させて売るものである [2]市場で流通する発行済み株式は企業から直接得た情報を基にしか買わない [3]企業に発行させた株は市場で価格を上げてから売り抜ける [4]仕手戦には参加しない  となります。 ――大儲け、または大損したエピソードをお聞かせください。 組長:最も印象に残っているのが2007年8月9日の(※3)BNPパリバショック(サブプライムショック)です。この時、私はレバレッジの利いたドル円のポジションと原油先物ポジションを大量に抱えたまま銀座で飲んでいました。携帯電話の電源を切っていたためマーケットの事情もわからず、気づいたときには8億円の損失が確定していました。  大儲けについては、印象に残るほどのものはありません。が、(※4)BG(Bank Guarantee=銀行保証)のファイナンス手数料で5億円くらいを何度か儲けました。あとFXはヒマ潰しにやってますが、先月は800万円ほどプラスでした。トータルでは十分儲かってますよ。 ――投資で大切なことは何だと考えますか? 組長:株に限らず投資に最も重要なのは「資金」と「情報」、そして「人間」だと私は考えています。  情報は、いかに重要情報へアクセスできるかということに尽きます。ネットに流れている情報、誰にでもアクセスできる情報は、投資において何の価値もないものと考え、それを理解した上で活用したほうがいいでしょう。  本当の重要情報とは人間関係から得られるもの。決してネットからではありません。だから、投資で勝つためには人間関係を大切にすることが重要なのです。パソコンの前で日銀のリポートを読むより、外に出て人間関係を構築するほうがよほど重要だと思います。 <用語集> (※1)加藤暠 1970年代後半から’80年代にかけ、医師や政治家など数千人の会員からなる仕手集団・誠備グループを率いた「兜町の風雲児」。2011年に般若の会として表舞台にカムバック、HPを通じて株価上昇を煽る言説を繰り返し、風説の流布の疑いで今年3月に証券取引等監視委員会の強制捜査を受け、11月17日に東京地検特捜部により金融商品取引法違反(相場操縦)の疑いで逮捕された (※2)新株引き受け、相対取引 第三者割当増資、MSCB(転換社債型新株予約権付社債)を企業とグルになって発行させる。通常、発行株数が増えるので株価は下がるが、派手なIRを打ったり株を仲間内で買い集めることでちょうちんに灯をつけ、一般投資家を呼び込み、株価が上昇したところで売り抜ける (※3)BNPパリバショック 2007年8月9日にフランスの大手銀行・BNPパリバが傘下のサブプライムローン関連商品の新規募集と解約の凍結を発表。サブプライム問題が顕在化したことでパニックが起き、為替相場にも大きく影響。1週間でドル円が10円、ユーロ円が15円、ポンド円は20円も下落した (※4)BG(Bank Guarantee) 銀行保証。海外の銀行で取得すると、元手に対して20倍程度のBGを発行することができ、組長はこうして得た資金を投資ファンドの運営者や法人に貸し付ける 取材・文/編集部