初飛行は「大成功」関係者の語るMRJファーストフライト

MRJ記者会見

11月11日、初飛行に成功した三菱・MRJ

 前回の記事では初飛行の模様をフォトレポートでお送りさせて頂いた。今回の記事ではその後行われた記者会見の様子をお伝えし、テストクルーの語った機体の感想、そして三菱重工の考える今後の計画について触れていこう。  まず、今回の初飛行は約一時間半、その間に上昇、下降、左右旋回と着陸時のシミュレーションを行い、速度は150ノット(約280キロ)、高度は15000フィート(約4600メートル)で行われた。着陸脚とフラップは下げたまま実施され、初飛行の結果を三菱航空機代表取締役社長である森本氏は「大成功」と評価した。

初飛行の感想は「ファンタスティック」

MRJ記者会見

記者会見での関係者の様子。左から戸田副操縦士、安村機長、森本社長、岸副社長

 そう語ったのは機長の安村氏だ。元航空自衛隊のパイロットで、テストパイロット歴25年の氏は33機種の機体を乗りこなすテストパイロットであるが、今回の初飛行での離着陸に関して「完璧」と評価した。  着陸進入中に若干揺れることもあったが、機体そのものの安定性が高く、コントロール性も高いため、立て直しは容易で素直な機体であったと語り、機体の出来には大変満足の様子であった。  そして、初飛行の感想を聞かれ「グレイト」と答えた副操縦士の戸田氏。海上自衛隊を経てパイロットになった戸田氏は、テストパイロット歴は42年、総飛行時間9800時間以上のベテランだ。この日の初飛行を「首を長くして待っていた、みんなの力を合わせて、やっとここまでこれたという印象がある」と笑顔で語り、安村機長同様、関連会社を含む開発チームへの感謝の意を伝えると共に、機体の完成度にも大きな期待を寄せていた。

MRJの初飛行は協力会社にとっての道筋になっている

MRJ記者会見

「機体が飛びたがっていた」と語る機長の安村氏

 そう語った森本社長は今回の初飛行は中京地域の地域活性化に触れ、今回のMRJの初飛行が地域産業の活性化になることに大きな期待を寄せているようだ。「日本の航空産業の礎となり、関連企業との協業でいい機体をつくり実力をつけていきたい。試験機の後の量産機では、協力体制の強化を具体的に進めていきたい」と語り、三菱だけではなく、関連する全ての企業や地域産業の活性化を進めていくという姿勢を明らかにした。  具体的な型式証明の取得に関しても「飛ばないとわからないこともあるが、決められたスケジュールの中でよりよい飛行機にしていきたい」と今後の意気込みを語った。二年間で2500時間の試験を行うという計画に関してもモーゼスレイクでの飛行試験・シアトルの開発拠点と名古屋での設計、それぞれの拠点が綿密に連携し、今後の開発を加速していくとのことだ。  また、実際の開発における懸念点としては「現状の三菱重工の課題としては人的リソースであり、まだまだ経験のある人材が少なく、航空先進国であるアメリカからの人材獲得を積極的に進めていきたい」と語った。

今後予想されるMRJ発展型旅客機について

MRJ記者会見

初飛行の結果について挨拶をする森本社長

 今後開発が予定されているMRJのバリエーションについても記者から質問が飛ぶこととなった。今回初飛行が行われた90人乗りクラス、MRJ90についてはこのまま開発を進めていくものとし、平行して短縮形の70人乗りクラス、MRJ70の開発を進めていくとのこと。  具体的な投入次期に関しては名明言がなかったものの、MRJ90を更に大型化した100人乗りクラスの機体MRJ100(仮称)の開発に関しても検討を続けていくものとし、このクラスが主流を占める欧州市場への売り込みに繋げていきたいとの意欲を明らかにした。

諸外国への営業

 肝心の販売網の構築に関しては官民一体となり、トップセールス活動のミッション派遣に大きな期待をよせているとのこと。  また、今後市場におおきな成長性が見込めるアジア市場に関しても「現状では資本力が弱い小規模な航空会社が多数ある状態であるが、それらが統廃合により大きな会社となり資本力を付けてくることは間違いないであろう」との見通しを明らかにした。  その市場に対する営業活動は現状で日本国内から行っているが、今後は現地航空会社との関係を密接に築いていきたいとし、今後国外へ営業拠点を新設し、先進国だけではなく、新興国への売り込みを積極的に行っていきたいようだ。  以上が今回の初飛行後に開催された記者会見の内容だ。初飛行時のフォトレポートでも触れたが、今回の初飛行はまだまだ通過点でしかない。  これからは型式証明の取得・営業活動などの厳しい道が待ち構えており、三菱だけでなく日本の行政を含めた官民の密接な連携が必要であることは間違いない。そして、それは決して容易な道筋ではないはずだ。ボーイングやエアバスのような大手メーカーが新型機開発の度、難儀しているこれらの問題に三菱がいかに対処していくか、今後の経過を見守っていきたい。<文・図版/村野裕哉> 【村野裕哉】 PowerMacとWindows98で育った平成生まれのガジェッター。趣味の旅客機を眺めつつHTML/CSS/Javaなどを中途半端にかじって育つ。ブログなどでレビュー記事を執筆中。twitter : @anaji_murano
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