「被害者」なのに「テロリスト」扱いされるパレスチナ人たちの怒り

空爆されたパレスチナの町で活動中の今野さん(左)

 連日パレスチナで、イスラエル人と人パレスチナ人の間で暴力的な事件が起こっている。銃撃や殺傷事件が多発、10月以降にパレスチナ人77人、イスラエル人10人が殺害されている。  マスコミの間では「第三インティファーダ(民衆蜂起)勃発か」との声まで出ている。「暴力の連鎖」が続いているので、双方頭を冷やしなさい、との論調が多いが 、現地に住む人々は別の捉え方をしている。パレスチナで医療支援などを行うNGO、日本国際ボランティアセンター(JVC)パレスチナ事務所の今野泰三代表に話を聞いた。

パレスチナ人は簡単に拘束・殺害、イスラエル人にはお咎めなし

 今回の衝突を「仲良くできないパレスチナ人とイスラエル人の対立」と単純化する報道が多くなされていますが、現地では全く別の捉え方がなされています。

エルサレム旧市街に礼拝に向かうパレスチナ人の出入りを制限するイスラエル軍の検問所(写真/今野泰三)

 9月の初めに、イスラエル治安部隊が、ユダヤ教の新年入りにあわせて、イスラム教の聖地アルアクサ・モスク付近を封鎖したことが衝突の発端だとされていますが、それはあくまでこれまであった多くのパレスチナ人に対する不公平な政策の一つです。例えば10月に入り、29人のパレスチナ人が警察や軍によって「ナイフで攻撃しようとしたので」という理由で殺害されています。  しかし、その中にはポケットに手を突っ込んで歩いていただけで突然撃たれた学生や、スカーフを取るのを拒否しただけで殺された女性もいると言われています。そして、イスラエル当局は事件の当事者である警察官や軍人の取り調べをほとんど行っていません。  一方、パレスチナ人が同種の事件を起こせば、大した取り調べや裁判もなくその場で殺害されたり拘留されたりしています。7月にはイスラエル人の入植者がパレスチナ人の家を焼き、1歳半の赤ん坊と両親が焼き殺される事件がありました。この件も、まともな調査がされていないとパレスチナ人の多くは怒っています。

マスコミ報道はイスラエル警察発表の垂れ流し

 パレスチナ人は「イスラエル人が何の法律にもしばられず、好き勝手に暴力を振るうことができる」という状況そのものに怒っています。  また、メディアの報道姿勢も問題です。BBCなど海外メディアを含む大手マスコミの発表は、イスラエルの警察発表にならっているかのようです。「パレスチナ人が攻撃してきたので、仕方なくイスラエル側も反撃した」という警察発表のニュースが世界に流れます。パレスチナ人としては、その不公平さや被害者であるはずの自分たちを「テロリスト」呼ばわりする意図的なレッテル貼りに憤っているのです。  確かにパレスチナ人の中には、一矢報いてやろうと暴力的な手段に出た人もいるでしょう。ですが、そのような人は少数だと思います。現在のような不公平な状況が続く限り、状況は改善しないでしょう(今野氏談)。 参照:JVCのパレスチナでの活動 <取材・文/白川愚童>