リポート「改憲1万人集会」 改憲派1万人が「決起」した日――シリーズ【草の根保守の蠢動 第23回】

 11月10日、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」は、「今こそ憲法改正を!武道館一万人大会」と称する集会を開催した。  既にこの大会については、各種メディアがその様子を伝えている。  なかでも出色だったのは朝日新聞と東京新聞だろう。 『改憲派が大規模集会 日本会議主導、首相がメッセージ (2015年11月11 日 朝日新聞)』 『頼みは中国脅威論 改憲派1万人集会 「紙上ライブ」で再現(2015年11月12日 東京新聞)』  両紙を除けば、その他新聞は、大会規模と主催者団体名、および安倍晋三の祝辞に簡単に触れた程度にとどまっている。  一方、お話にならないのは、ネットメディアだ。  ネットメディアによる「独自記事」を装ったものを一通り読んでみたものの、そのほとんどは「日本会議のwebによると」「ネットの情報によると」などと、現場に足を運ばずとも書けるような内容ばかり。また、新たな論点や疑問点の提示もなく、報道としても論説としても価値あるものはなかった。  だが、考えようによっては、報道陣の少なさもレポートの貧弱さも無理からぬことかもしれない。  何せ参加者はわずか1万人しかいないのだ。1万人程度の政治的な集会など珍しくもなかろう。首相が何かの集会に祝辞を寄せることにもニュースバリューはさほどない。また、大会の内容や登壇者なども、改憲派の集会であれば当然の顔ぶれと内容であり特筆すべき点はない。  と、考えると、おざなりな報道で対応した各紙の姿勢は当然とも言える。この大会そのものには、報道価値がないのだ。  しかし、本当に注目し検証されるべき点は、この大会そのものではなく、この大会の「周囲」にこそある。

会場への道で「行動する保守」関係者と遭遇

 会場に向かう経路で、最初に出くわした大会関係者はこの両名。

在特会草創期に幹部だった村田春樹(左)と関西の「行動する保守」の大御所である葛目浩一(右)

 左側の人物は、村田春樹。在特会の草創期に幹部を務めた人物だ。今は、在特会とは距離を置いている。しかしこの村田春樹、連載の番外編で「グレンデール慰安婦像」の話題に触れた際に登場した山本優美子と同じく、「日本会議界隈に拾い上げられた在特会関係者」の筆頭だ。彼は椛島有三とともに同じイベントで講演したこともある。 【椛島有三:基調講演】沖縄支援集会 in 靖国 日本民族にとっての「沖縄戦」⑥ 【村田春樹】沖縄支援集会 in 靖国 日本民族にとっての「沖縄戦」⑧  右側の人物は、葛目浩一。関西の「行動する保守」界隈では「新聞アイデンティティー」の発行人として知られる。関西の「行動する保守」が起こした最悪の事件ともいうべき「徳島教組事件」の首謀者・中曽千鶴子は、この葛目浩一のことを、自身のブログで「本当にいつもお世話になっています」と紹介している。彼が発行する「アイデンティティー」紙は、関西の行動する保守界隈をつなぐミニコミ紙として機能しているらしく、筆者もあの界隈の人物がこの新聞に取り上げられることを喜んでいる姿をたびたび目撃している。また、葛目浩一は、生長の家関連団体での活動も確認されていることにも留意が必要だろう。本連載第11回で桂福若と中曽千鶴子による繁昌亭でのイベントの背後に生長の家原理主義者たちのネットワークが存在することを示唆したが、この葛目浩一こそ、関西における「行動する保守界隈」と「生長の家原理主義者ネットワーク」を結ぶ接点のような人物の一人なのだ。  次章「“動員”された1万人の観衆たち」では、見事な誘導で会場入りした1万人の観衆について検証してみよう。 <取材・文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie) 撮影/我妻慶一 菅野完>
日本会議の研究

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