検証!都市伝説「ブルーベリー=目に良い」は、こうして生まれた
ブルーベリーの果実などに含まれ、「目にいい」と言われるアントシアニン。抽出された成分には一定の作用が期待できるケースもある。ただし、その対象は一般にイメージされている「目」に対する効果ではない。実は、高コレステロール血症等、”生活習慣病”に対する作用に期待が寄せられている。というのも、研究によって以下のような結果が得られているからだ。
・高コレステロール血症患者にアントシアニン320 mg/日を24週間摂取させた。
⇒HDL(善玉)コレステロール値の上昇、LDL(悪玉)コレステロール値の低下などが認められた。
・高コレステロール血症患者122名にアントシアニン320 mg/日を24週間摂取させた。
⇒血中HDLコレステロール値の増加、LDLコレステロール値の低下が認められた。
このほか、「ビルベリーのフラボノイドであるアンソシアニジン複合体25%を含む組成のもの」を経口摂取することで「糖尿病や高血圧性網膜症などによる網膜の病変の改善などに対し」有効性が示唆されている。
現時点では「非常に低水準であるが」という枕はつくものの、少なくとも「目」に対する効果よりも、一定の有効性は期待されている。
ちなみにここからは余談になるが、そもそもビルベリーやブルーベリーが「目にいい」という説が浮上したのは、第二次大戦中にビルベリージャムをよく食べていたイギリス人パイロットが薄明かりのなかでも物がはっきり見えたという逸話によると言われている。ビルベリーやブルーベリーの研究者からもこの話はしばしば持ちだされるが、実はこの話自体の真偽が非常に微妙……というか、都市伝説だった可能性が高いという。
第二次世界大戦当時、イギリス空軍には夜間迎撃戦闘機で活躍した、ジョン・カニンガムというパイロットがいた。イギリスの航空機メーカー、デ・ハビランド社のテストパイロットであり、後に取締役にまで上り詰めた人物だ。
ドイツ空軍との空戦では連戦連勝。当時のイギリスでは。その原動力として「暗視能力の高さ」が挙げられた。そして「毎日、ニンジンを食べていたから暗視能力が高かった」とPRされたという。ん? ニンジン……? そう。ビルベリーでもブルーベリーでもなく、元ネタはニンジンだったのだ。
イギリスの新聞『テレグラフ』の電子版でもやはり「Carrots」と報じられているが、よくよく読むとこのエピソードすら捏造なのだという。
実は当時のデ・ハビランド社のモスキート機には、最先端技術であったレーダーが搭載されていた。実際の戦果は高機能レーダーによる部分が大きかったが、イギリスの情報部としてはその事実は隠蔽しておきたい。そこで「特殊能力を持つヒーロー」を作り出し、戦闘力の源を隠すことで戦いを有利に運ぼうという思惑があったというのだ。
「食べ物で目がよくなる」という説自体、旧イギリス空軍による事実の捏造である上に、いつの間にかニンジンがベリー類に入れ替わってしまったという、歴史の捏造の見本のような見事な展開。もちろん果実に罪はないが、少なくとも”機能性”という意味において、ビルベリーやブルーベリーの立場がとても(ベリー)弱くなるのも致し方ないのかもしれない。
<文/松浦達也>
まつうら・たつや/東京都生まれ。編集者/ライター。「食」ジャンルでは「食べる」「つくる」「ひもとく」を標榜するフードアクティビストとして、テレビ、ラジオなどで食のトレンドやニュース解説を行うほか、『dancyu』などの料理・グルメ誌から一般誌、ニュースサイトまで幅広く執筆、編集に携わる。著書に『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成も手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破
都市伝説の端緒は第二次世界大戦
実は「食べ物で暗視能力向上」は英国空軍の機密漏洩防止策だった
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