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70年代は不良の溜まり場、80年代は学生の憩いの場、00年以降はオタクの交流の場として、形を変えながらも、街の風景の一つとして存在し続けたゲームセンター。しかし、家庭用ゲーム機、携帯ゲーム機の登場により、店舗数は徐々に減少。最盛期(1986年)には2万6000店あった店舗も、現在では5000店にまで減少している。
そんなゲームセンターが、今、シルバー世代で賑わっているという。彼らのお目当ては、メダルゲームだ。セガエンタテインメントの吉野氏は「シルバー世代の客様は、都心よりもショッピングセンターなどに入っている地方の店舗に、よくお越しいただいてます」と語る。かつてほどではないとはいえ、ゲームセンターも景気を取り戻しているようだ。
しかし、シルバー世代の多くは年金生活者。ちょっといやらしい話だが、儲かっているのだろうか? その実態を調査してみた。
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平日の昼間だったため、ゲームセンターにはほとんど人がいなかったが、メダルゲームのコーナーには、シルバー世代の姿がチラホラと
日本アミューズメント産業協会が公開しているアミューズメント産業界実態調査(平成24年度版)によると、ここ10年のゲームセンターの売上は2006年をピークに減少傾向にある。いわゆる“音ゲー”こそ売上は好調だが、テレビゲーム、クレーンゲーム、プリクラなど他のジャンルは軒並み数字を落としている。もちろん、メダルゲームも例外ではない。売上高こそ、いまだクレーンゲームに次いでいるが、年5〜10%の割合で売上が減少している。しかし、シルバー世代のお客が増えだした3年前から「増えるとまでは言えないが、ほぼ横ばいで推移している」という。そして、その理由を吉野氏は次のように語る。
「ゲームセンターは、そもそも昼間はお客が入らないんです。でも、その時間帯をシルバー世代が埋めてくれた。客単価自体は決して高くないかもしませんが、今までなかった売上がそこに発生するわけですから、これはとてもありがたい話ですよね」
メダルゲームは、他のゲームと違い、リピート率が高い。その理由は、一度山盛りになったメダルはお店に預け、再度来店して使用するしかないからだ。さらに使用期限を決めてしまえば、来店頻度を高めることもできる。「飲み屋でいうとボトルキープのシステムに似てますね」というように、1日の平均客単価が1000円程度だとしても、この継続性は客離れの激しいゲームセンターにとって、何より魅力的なのだ。
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ゲームセンターには、軽食を楽しめるコーナーが隣接されている場合もあるが、シルバー世代向けの食事を提供する店舗は、まだ少ない
ゲームセンターは現在、“上客”となったシルバー世代に向けて、さまざまなサービスを提供している。メダルのサービスや、シルバー世代向きのスタンプカードの配布はもちろんのこと、画面上に大きな文字で説明が映し出されるゲーム機の開発、さらには、茶菓子や毛布の無料貸し出しなど、その内容はバラエティに富む。
しかし、メーカーの狙いは、シルバー世代の囲い込みだけに終わらない。
「ゲームセンターには、メダルゲームだけでなく、子供向けにキッズカードゲーム、大人向けに音楽ゲームやテレビゲームがあります。メダルゲームを遊びに来たシルバー世代をきっかけに、こういった別の世代のお客も取り込みたいと考えています。たとえば弊社では、KidsBee(キッズビー)という3世代で楽しめるビュッフェダイニングを展開しているのですが、そういった施設も今後、どんどん増やしていきたいと考えています」
これはセガが経営するゲームセンターの話ではないが、都内某所のゲームセンターでは、メダルゲームを楽しむシルバー世代の客が、お互いが馴染みなのか、ゲームをしながらも世間話に花を咲かせていた。しかし、その笑顔はどこか物寂しい。セガの狙い通り、孫が来るようになり、そのお父さんお母さんが現れるようになった時、このご老人がたの笑顔は、もっと輝くのかもしれない。<文・写真/HBO編集部>