究極の投資はやはり分散投資だった?

アベノミクス相場に黄色信号が点灯するなか低迷する株式市場に笑いが止まらない投資家がいる。「下がるほど儲かる」投資法の謎を緊急取材した!

今こそ“ほったらかし”インデックス投信の始めどき!

地球儀「株価の下落は大歓迎」と話すのは、個人投資家のkenz氏。チャイナショックによる同時株安の余波で保有する資産の価格は下落しているのに、なぜか余裕たっぷりの表情である。  kenz氏が8年間にわたり続けているのが、インデックスファンドによる世界分散投資だ。インデックスとはTOPIXのような市場平均を示す指数のことで、これらの指数に連動する投資信託をインデックスファンドという。  インデックス投資アドバイザーのカン・チュンド氏は、その魅力についてこう話す。 「市場全体に投資するので倒産などのリスクがなく、知らない企業や国も含めた広く浅い分散投資が可能になります」  ただし、インデックス投資自体が下落に強いわけではない。重要なのはその買い方だという。 「毎月同じ額の投信を買い続ける積み立てなら、『下がるほど儲かる』が可能になります」(カン氏)

スタート時点より安くても利益が出る

 そのカラクリはこうだ。毎月1000円分のりんごを買うとする。ある月のりんご価格が200円なら5個買えるが、翌月100円に暴落すれば倍の10個購入できる。翌々月に150円まで値を戻せば、2か月かけて2000円で買った15個のりんごは2250円分になっていることになる。  この場合、りんご価格は投資を始めた月より25%も値下がりしているのに、12.5%の利益が出ることになる。投資信託でも同じで、相場が下がって基準価額が下落すれば同じ投資額でも多くの口数を買うことができるのだ。  下落局面で口数を稼いだ後で相場が回復すれば、一括投資よりずっと大きな利益を出せることになる。途中の下落が長いほど、また下落幅が大きいほど最終的な利益は膨らむのだ。 「一括投資なら、買った後で株価が急落し、なんとか買値に戻った場合の利益はゼロですが、積み立て投資なら2倍になってもおかしくない。途中の下落局面が深刻であるほど少しの回復で利益が出るので、右肩上がりの相場でなくても利益は十分出せます」(同)  積み立てはいつ始めてもいいが、特に口数の稼ぎやすい下落局面は絶好の始めどきなのだという。  冒頭に登場したkenz氏が続けているのもインデックスファンドの積み立てだ。’07年の開始直後にリーマンショックに見舞われたため一括投資なら最悪のタイミングだったが、積み立て投資では最高のスタートとなった。長い下落相場で買いためたぶんがアベノミクス以降の世界的な株高で大きく花開き、下落基調に転じた今も含み益は40%に達しているという。 「買える口数が少ない上昇相場より、たくさん買える下落相場のほうがワクワクします。長期投資なので含み益や含み損の額には興味がないですね」(kenz氏)  世界分散投資のパフォーマンスは、資産の組み合わせ(ポートフォリオ)とその割合で大きく変わるという。値動きに相関が少ない株と債券をベースに、日本、先進国、新興国で分けるのが基本だ。株の割合が多いほどハイリスクハイリターンとなり、債券が増えるほど値動きはマイルドになる。  カン氏が提案するのは、株6割債券4割、さらに経済規模を示すGDPの比率で国を分けるポートフォリオだ。kenz氏はREIT(不動産投資信託)を組み入れる一方、海外債券はゼロというユニークな組み合わせで投資する。 「外国債券の上昇は為替変動で相殺されることが多いので思い切って外し、日本債券を多めにしています。日本債券のリターンはわずかですが、リーマンショックの際ほとんどの資産が暴落するなかでプラスを保っていて安心感がありました」(kenz氏)
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの基準価額推移

世界の株と債券に分散投資するセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの基準価額推移。積み立てでなくても43.32%の騰落率

含み損にくじけず長く続けるのが重要

 銘柄選びについて、カン氏とkenz氏の意見は一致する。指数に連動する以上パフォーマンスは同じなので、コストがなるべく安い投信を選ぶのが鉄則だ。ネット証券なら500円から買えるものもあり、月額1万円あれば十分な分散投資ができるという。  積み立て投資を成功させる秘訣に、カン氏は「途中でやめず長く続けること」とアドバイスする。 「下落局面でもコツコツ続けてこそ後の利益が大きくなるのに、含み損に耐えられずやめてしまっては意味がない。自動設定したら残高チェックはしない『ほったらかし投資』がオススメ」  40代サラリーマンであるkenz氏の夢は、増やした資産で早期リタイアすることだ。 「必要なぶんだけ取り崩しながら投資を続けていきます。お金に振り回されない自由を手にいれたい」  始めるタイミングを気にせずにスタートできるインデックス投資はまさに現在の局面にうってつけ。もちろん、暴落局面で手放しては意味がない。「投じた総資金が倍になったら一部を利確」などルールを決めて、長い目で資産構築を目指していこう。

積み立てに最適な株&債券ファンドはコレ!

●ニッセイTOPIXインデックスファンド 基準価格:9300円/総資産:17億6000万円/販売手数料:無料/信託報酬:0.3132% 主にニッセイ国内株式インデックスマザーファンドに投資し、TOPIX(東証株価指数)の動きに連動する投資成果をめざすインデックスファンド。 ●ニッセイ国内債券インデックスファンド 基準価格:1万0014円/総資産:14億9400万円/販売手数料:無料/信託報酬:0.3348% ニッセイ国内債券インデックスマザーファンドを通じて、国内の公社債に投資することにより、NOMURA-BPI総合の動きに連動する投資成果をめざす。 ●ニッセイ外国株式インデックスファンド 基準価格:1万2256円/総資産:164億5800万円/販売手数料:無料/信託報酬:0.4212% 日本を除く主要先進国の株式市場の指標であるMSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざす。 ●ニッセイ外国債券インデックスファンド 基準価格:1万1514円/総資産:27億4900万円/販売手数料:無料/信託報酬:0.4104% ニッセイ外国債券インデックスマザーファンドを通じて実質的に日本を除く主要国の国債に投資し、シティ世界国債インデックス(除く日本、円換算ベース)の動きに連動する。 ●eMAXIS新興国株式インデックス 基準価格:1万2758円/総資産:245億5300万円/販売手数料:無料/信託報酬:0.648% 新興国株の値動きを表す代表的な指数であるMSCIエマージング・マーケット・インデックス(円換算ベース)と連動する投資成果をめざして運用する。 ●eMAXIS新興国債券インデックス 基準価格:1万2209円/総資産:57億5700万円/販売手数料:無料/信託報酬:0.648% JPモルガンGBIーEMグローバル・ダイバーシファイド(円換算ベース)をベンチマークとし、連動する投資成果をめざして運用を行う。 ●世界経済インデックスファンド 基準価格:2万22円/総資産:157億5800万円/販売手数料:無料~3.24%/信託報酬:0.54% 株式と債券に半々ずつ投資。先進国、日本、新興国の株式と債券に分散投資している。ベンチマークはシティ世界国債インデックス(先進国債券)など。最初はこれ1本でもOK ※各数値は10月9日時点 【カン・チュンド氏】 インデックス投資アドバイザー。晋陽FPオフィス代表。積み立てによる資産形成をアドバイス。著書に『毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術』(アスカビジネス) 【kenz氏】 個人投資家。人気の投資ブログ「インデックス投資日記@川崎」で、インデックス投資の魅力や最新のニュース、パフォーマンスを発信している http://longinv.blog103.fc2.com/ 取材・文/森田悦子
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