パキスタンの「核兵器の父」とされる密売人の「第四の顧客」
『The National Interest』誌は〈トルコはマフィアの介入でコソボ、ボスニア、ヘルツェゴビナの密売ルートから旧ソ連の濃縮ウランを保有している〉と言及している。しかも〈トルコはパキスタンの核密売業者アブドゥル・カディール・カーンの活動にこれまで関与して来た〉と指摘している。〈1987-2002年の間にイラン、北朝鮮、リビアに数千台の遠心分離機を売り〉その為の〈電子部品などはトルコ経由で運ばれた〉という。そして、当初パキスタンが公式には手に入れることの出来ない部品をトルコ経由で手に入れていたのだ。
このような背景をもっているトルコであるが故に「ウラン濃縮に必要な遠心分離機を現在所有しているのか?」という質問については、これまでの諜報機関の公開した情報によってその回答は既にされているように思える。
同誌によれば、〈2003年にリビア向けにマレーシアからドバイ経由でトリポリに送った10,000台の遠心分離機とその関連部品の多くが途中で紛失した事件があった〉ことに触れ、〈多くの専門家はこれをミステリーな「第4の顧客」〉と呼んでいる〉と報じている。「第4の顧客」、それは、アブドゥル・カデイール・カーンが販売したイラン、北朝鮮そしてリビアの次の存在に紛失されたとされる物資が渡っているという意味だ。しかもこの「第4の顧客」はアブドゥル・カデイール・カーンから〈紛失されたとする物資よりも更に多くの物資を手に入れている〉という。そして結論として〈トルコがその「第4の顧客」だ〉と同誌は指摘しているのだ。
アブドゥル・カデイール・カーンは〈「第4の顧客」に核兵器をデザインするブループリントも提供している〉という。しかも、〈現在もトルコはパキスタンとは核開発におけるパートナーシップの関係を維持している〉という。イスラエルのネタニャフ首相はトルコのこの動きを素早く掴んでいたようで、〈2010年3月15日にギリシアの当時のパパンドレウ首相に「トルコがいずれ核兵器を所有するようになる」〉と伝えたとこともなども同誌は言及している。
もちろん、米国の国益を論じる『The National Interest』は、この推測記事にも何らかの思惑があるだろうし確定した事実ではない。ただ、中東におけるトルコはイランと同様に長い歴史文化をもっている国で、しかもオスマントルコは中東を支配した歴史もある。その意味ではイランと同様に発展出来るノウハウを培った組織構造を社会的に備えている国だ。米誌の懸念もあながち荒唐無稽な話ではないのかもしれない。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身