中国経済減速の中、盛況だった中国長春の「東北アジア博覧会」。日本のブースの様子は…

メイン6カ国として日本国旗も並ぶ第10回東北アジア博覧会

 9月6日、6日間に渡り中国長春で開催された「第10回東北アジア博覧会」が閉幕した。翌週に発表された吉林省の公式発表では、来場者約10万人、関係者約1万人。中国経済の減速が伝えられる中、対外貿易取引額約8億ドル(約964億円)、国内貿易取引額約22億9000万人民元(約433億円)といずれも昨年より増やし、325件の締結契約を結んだ。これらの数字を反映するかのように出店ブースも3306ブース(前年比+748)と大幅に増やしている。  2005年から始まった同博覧会は、中国東北三省の中では最大規模の博覧会で、中国、日本、北朝鮮、韓国、モンゴル、ロシア、台湾、香港、アセアン、欧州、オセアニア、北米から111の国と地域が参加している。中国のこの手のイベントでは珍しく日本国旗も掲揚されているのだが、さてその日本はこのイベントで新たな中国ニーズをつかめたのかなどをお伝えしたい。  イベント会場は9つの建物に分かれており、日本や北朝鮮、韓国、ロシア、モンゴルが入るのは、5号館「東北アジア国家商品館」となる。

医療品や化粧品、家電などで人を集める韓国や北朝鮮コーナー

東北アジア国家商品館(5号館)の北朝鮮コーナー

 ロシア、モンゴルと並ぶ北朝鮮コーナーは、全部で28ブースと毎年10月に丹東で開催されている「中朝経貿文化旅遊博覧会」よりは小規模だ。ブースを覗くと人が集まっているのは、平壌医科大学の医師が監修している糖尿病や高血圧などに効果がある漢方系の薬。糖尿病の薬は1本100元と高額だが目の前で飛ぶように売れていた。その他、オットセイのエキスを使った精力剤や自然素材を使った化粧品などを手にする人が見られた。   もう1ブース、小魚や貝柱などを干物にした試食コーナーに中年女性が群がっていた。ニーズが高いのは薬や健康食品、化粧品だ。  コーナー内では、北朝鮮スタッフも見られたが、この博覧会は周辺の大学からのボランティア(黄色いシャツ着用)が多く、主に彼らが接客しているため、北朝鮮スタッフは商談に徹するためか、椅子に腰を据え、雑談したり、監視の目を光らせていた。 ⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=60243

炊飯器などに人が殺到した韓国ブース

東北アジア国家商品館の半分を占めた韓国コーナー

 「東北アジア国家商品館」である5号館の半分ほどを埋め尽くしていたのが韓国だ。ブース数は200を超えるほどある。  韓国ブースで扱っていたのは、中国人に人気の炊飯器や健康食品、漢方系の薬、化粧品、浄水器などで特に若い女性が殺到しブースが見えないくらい賑わっているのは、顔パックの販売ブースだ。顔パックを扱っているブースだけで50以上はある。  韓国の顔パックは、中国人女性に人気が高く、韓国・仁川国際空港でも爆買する姿がよく見られる。まとめ買いしていた女性に話を聞いてみると、動物の顔がデザインされた顔パックは10枚入りで50元(約950円)、通常買っている格安通販だと99元(約1880円)らしいので約半額だ。合わせて購入していた台湾製パックは、10枚入り5つで100元(約1900円)、1つあたり20元(約380円)で通常買っているのは1つ79元(約1500円)とのことで、4分の1ほどの価格で売られていた。  長春市の会社員という20代のこの女性は、こんなに安くて心配ではないかとの問いに「ここで売られているものは本物だと思います。むしろ通販より安心ですよ」と答えてくれた。やはり、中国ビジネスでは”本物”が1つキーワードとなる。この日は博覧会最終日の日曜日で値引されていた影響もあり韓国コーナーは活気に満ちていた。 ⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=60252

来場者のニーズと離れていた日本コーナー

日本コーナー

 日本のコーナーがあったのはこの北朝鮮コーナーの斜め前。本博覧会はジェトロ(日本貿易振興機構)も支援しており、ブースも設けている。 しかし、ここ最近の日中関係を反映してか、日本のブース数を数えると13ほどと北朝鮮の半分以下と元気がなく訪れる人も少ない。  客が少ないのは他にも理由がある。3分の1ほどが京都や長崎、鳥取などの府県庁の観光誘致のブースで、北朝鮮コーナーでごった返していた薬や食品、化粧品などを扱っているブースが少ないのである。近年、中国の急速な高齢化にともない中国で需要が高まっている日本の介護機器や器具の展示を期待していたが、パネル説明のみだった。京都のブースでは、金箔が施された南部鉄器が展示されていたが、来場者が求めるものとのピントのズレを感じざるを得ない。 ⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=60248  日本は国旗も掲げられていてメイン6か国の1つに数えられているものの、ブース数ではマレーシアよりも少なく、訪れる人も寂しげ。中国人による日本での爆買を見ていると、確実に売れるものはあるはずなのだが……。これは日中関係の冷え込みが影響しているがための結果なのか、はたまた現代中国人のニーズを捉えきれていないのだろうか……。 <取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma