原発の穴埋め? 国内の石炭火力発電所が建設計画ラッシュ

建設計画ラッシュの石炭火力発電所。ベースロード電源重視の電源計画はイバラの道?

 今年8月、4年ぶりに再稼働した九州電力川内原発1号機。しかし原子力規制委員会の適合審査を得た原子炉はいまだ5基に過ぎず、電力に占める原発比率が3・11以前に戻るのは極めて難しい状況だ。  そうした中、原発とともにベースロード電源とされている火力発電所の建設計画が相次ぐ。その数は8月時点で実に48基。合計発電出力は約2350万キロワットにも上る。ベースロードを優先する国の電源計画は、自然エネルギーを増やす代わりに石炭火力への依存を深めるのか。

石炭火力の比率がさらに増加?

 国内の電力に占める石炭火力の割合は2013年度で30%。石炭は安価で供給も安定しており、国は石炭火力を原発と並ぶベースロード電源に位置付ける。  ところが石炭火力はCO2の排出量が多く、例えば天然ガス火力発電と比べて2倍という大きな欠点がある。大気汚染物質の排出も無視できない。国は30年度の電源構成案で、石炭火力の比率を、現在よりも低い26%に引き下げるとした。  しかし現実には建設計画ラッシュだ。「計画中のものが全て発電すれば、30年時点で石炭火力の比率は26%をオーバーするのではないでしょうか。しかし、国は石炭火力における将来の枠組みを明確には示していません」。NPO気候ネットワークの桃井貴子さんはこう指摘する。  国は石炭火力の比率を下げる目標を示しつつ、他方ではベースロードと位置づけ、大規模石炭火力の建設に必要な環境アセスメントを緩和している。その狙いはどこにあるのか。桃井さんは次のように推測する。 「30年度の電源構成案では原発比率は20~22%です。しかし運転期間の40年ルールがあり、さらに新増設やリプレース(置換え)も難しい状況では、この目標は非現実的でしょう。そう考えると、原発と並びベースロードとされる石炭火力の比率がなし崩し的に増えていくことが考えられます」  つまり石炭火力が原発の穴埋めになりかねない、という見立てだ。

環境省は石炭火力の増設に慎重

 しかし石炭火力を増やせばCO2排出量の増大は避けられず、世界的な気候変動対策の流れに逆行する。しかもベースロード電源の確保を優先することで自然エネルギーの導入が制限され、普及が妨げられる恐れも生じる。 「ベースロードという発想は世界的に見れば古い考え方になりつつあります。電力システムに自然エネルギーをどう取り込み、使っていくかがこれからの課題ではないでしょうか」と桃井さん。風任せ、天気任せと揶揄されがちな自然エネルギーだが、ドイツでは2000年時点で6%程度だった導入比率を今日の約3割まで引き上げた。短期間で自然エネルギーの導入を増やすことは不可能ではない。  日本でもこの夏、猛暑にも関わらず電力供給に余裕があった。これは節電に加え、FIT(自然エネルギーの固定価格買取制度)で導入量が急増した太陽光発電も貢献しているだろう。  環境省は、温暖化ガスの排出を削減する国の方針との整合性を重視し、石炭火力の増設に慎重だ。今年8月、中部電力が愛知県内で計画している石炭火力発電所の建設に対して「是認できない」との環境大臣意見を公表。環境大臣はこれに先立つ今年6月にも、山口県宇部市で計画中の石炭火力について、やはり同様に「是認できない」との意見を示している。原発と石炭火力をベースロードに据える国の方針はイバラの道だ。 <取材・文/斉藤円華>