女性写真家が「写真絵巻」で再現した、沖縄の知られざる歴史とは?
今年7月~8月、沖縄出身の写真家・石川真生さんの写真展「大琉球写真絵巻」が東京と那覇で開かれた。オスプレイ配備や辺野古の新基地建設など、常に日本本土から米軍基地の重みを負わされている沖縄。石川さんは「なぜ沖縄はこんな目に遭っているのか」という疑問に向き合いながら写真を撮影した。作品作りを通して知ったのは、石川さん自身も学校で教わらなかった「知られざる沖縄の歴史」だった。
「安倍首相になってからオスプレイが来て、停滞していた辺野古の基地計画が再び動き始めた。怖い、ゾンビのようだと思った」と話す石川さん。「沖縄の現状を理解するには、琉球国の歴史から振り返る必要がある」と思い至ったことが作品制作の動機だ。
以前見た「屏風絵」をヒントに、沖縄の過去から現在までを描く「歴史絵巻」を写真でできないか。大きな横長の布に写真作品をプリントする「写真絵巻」の構想が固まった。
写真は約400年前の薩摩侵攻から今日に至るまで、日本、清(中国)、米国と周囲の大国に翻弄された沖縄史の重要な節目を寸劇風に再現。登場する歴史上の人物や住民、米兵や政治家らは石川さんの友人が自前の衣装とノーギャラで演じたそうだ。
制作にあたり石川さんは沖縄史を勉強。1879年の琉球処分で琉球国は消滅し、日本の領土となった。これを阻むべく琉球王府の政治家、林世功(りん・せいこう)は清に渡り、事態への介入を要請するも果たせず、抗議の自害をしている。
「私も琉球国の歴史を深く知らなかった。沖縄戦以前の沖縄史は学校でほとんど教わっていない」と石川さん。制作過程は石川さんにとって「知られざる沖縄史」との出会いでもあった。
作品ではこの林世功のほか、薩摩藩への服属を拒否して処刑される琉球の役人、沖縄戦で負傷した子供、辺野古沖に沈められたコンクリートブロックの下でもがく安倍首相などが写真絵巻に収められている。
「沖縄は常に日本からひどい仕打ちを受けてきた。米国も沖縄を戦利品としか思っていない。沖縄の歴史を勉強するほど恐ろしくなって、本当に日本が嫌いになった」。それだけに石川さんは多くの人に作品を見てほしいという。「私の独断と偏見による視点だが、これが私が見せたい沖縄です。『観れ観れ攻撃』よ」(笑)
テーマは深刻だが、寸劇仕立ての写真にはユーモアが漂う。とりわけ、コンクリートブロックの下敷きとなる安倍首相の写真は、何とも言えない間抜けさに思わず笑ってしまう。写真絵巻はパート2まで完成。現在制作中のパート3は「沖縄の未来」にも触れたいという(パート2以降の展覧会についてなど、詳しい情報は石川さんのFacebookにて)
「いつまでも米軍の戦争に加担するのはやめようよ、と思います。沖縄は被害者であると同時に、米軍基地を抱える沖縄は米軍の出撃先の国にとっては加害者でもあるからです。これ以上外国の戦争に加担したくありません。沖縄の未来は明るいか? それは分かりません」(石川さん)
<取材・文・撮影/斉藤円華>
沖縄史の重要場面を「再現」
「未来は良くなるか? それは分からない」
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