ハンバーガー界の冒険野郎・ロッテリアが次々と新商品を生み出す理由

「貞子ときっとクールシェーキ」、「かっぱえびせんバーガー」、「(エビバーガーからエビを抜いた)エビなしバーガー」など、斬新すぎるアイデア商品で、常にネット上をざわつかせるハンバーガーチェーン・ロッテリア。未知なる味の開拓者として、創業以来数多くの新商品を世に送り出してきたが、ここ数年、その数が急増している。
ロッテリア

提供している商品こそ違えど、バーガーキングも実は同じグループ企業だ

 2012年にリリースされた新商品の数は10個だったが、2013年には21個に、そして2014年には36個にまで増え、今年もすでに多くの新商品がリリースされている。この新商品の数、いったいどこまで増え続けるのだろうか? 「期間限定だったり、地域限定の商品もあるので、社内でも何がリリースされたかをちゃんと把握している人間は、そう多くないと思います」  そう答えてくれたマーケティング部の小島啓太氏に、ロッテリアが奇想天外な商品を出し続ける理由を聞いてみた。

「おいしさ」だけでなく「楽しさ」や「驚き」も提供したい

 通常フード業界では、半年から1年の期間で新商品の開発を進めるが、ファーストフードは、最新のトレンドを取り入れることも重要なため、企画立案から商品のリリースまでロッテリアでは3~4か月のタームで進めているという。また、商品の開発は、商品開発部とマーケティング部が主導している。具体的にはまず、1年間を通して、その時期に合わせた企画商品を年度始まりに考える。次に、1週間に1度企画会議を行い、コラボ商品や、競合他社さんの動向やお客様相談センターに寄せられた声などを参考にした商品の検討を行っているという。 「『おいしさ』だけでなく『楽しさ』や『驚き』も提供する。これが、弊社のモットーなんです。ハンバーガーを売るために、極端に値段を安くするとか、何かをプレゼントするといった企画を頻繁に行う会社もありますが、弊社は新しい商品を作り続けることを第一優先としているので、企画会議も毎年発売される新商品も数も多いんです。実際、創業5年目の1977年に発売した世界で初めてえびを使ったハンバーガー・エビバーガーと2007年に発売した絶品チーズバーガーは、今でもロッテリアで1、2を争う人気商品となっています」  また、最近のロッテリアの商品には「ご褒美」「贅沢」などキャッチーな言葉や、「大勝軒」「松坂牛」などといったブランド力の強い言葉がつくことが多い。このことについて小島氏は「商品名だけでお客に伝わることを意識している」と語る。さらに、今年4月に発売され、ネットで大きな話題を呼んだ「エビなしバーガー」も「エイプリルフールのネタではありません(笑)。『楽しさ』や『驚き』を重視した商品です。でも、タルタルだけでも、サンドウィッチ感覚で本当においしいんですよ!」と笑顔で語る。こちらの商品も、お客様からの評判は上々だったようだ。

失敗した商品やボツになったネタも、いずれ花開く時が来る

 もちろん、新商品すべてが成功したわけではない。失敗した商品もたくさんあったという。なかでも特に“やっちゃった”感のある商品を実際に挙げてもらった。 「お好み焼きバーガーというものがあったのですが、この商品はパンズをお好み焼きにしたんですけど、お好み焼きだから鉄板で焼かないといけない。でも、焼いてしまったがために、熱すぎて持てなくなってしまったんです(笑)。それと、グルメバーガーも失敗でしたね。暖かい具材と冷たい具材を2枚のパンズに分けて、別々に食べてもいいし、重ねて一緒に食べてもいいという形で提供したんです。ですが、別々に食べる分には問題がないんですが、重ねて食べようとすると、具材がボロボロと落ちてしまい、食べづらいとのお声をいただいてしまいました。(笑)。あとは、朝メニューでお味噌汁とサラダと焼きおにぎりをセットにしたおにぎり定食を提供したのですが、そもそもハンバーガー屋におにぎりを食べに来る人はいなかったようで、失敗でした(笑)」  笑い話のように語る小島氏だが「失敗は、それほど気にすることではない」と続ける。なぜなら、これらの失敗は“失敗は成功のもと”という言葉の通り、決して無駄にはならないからだという。 「1999年、コールドサラダチキンサンドの販売を行ったんですが、当時はハンバーガーといえばあったかいものというイメージが強かったため、あまり売れなかったんです。でも今はヘルシーだし、サラダ感覚で食べれると、レギュラーメニューとして一定の人気を得ているんです。こんなふうに、たとえ失敗した商品だったり、ボツになったネタでも、何かのきっかけで売れる可能性があるんです。なので、週1回の会議で溜まったネタも大事な商品ストックとして、書庫で管理させていただいています」

ハンバーガー界のターニングポイントとなった2014年

ロッテリア03

こちらは銀座店限定1000円のハンバーガー。銀座では高額なハンバーガーも売れるようだ。また、どのハンバーガーも半熟卵をトッピングすると味がワンランク上がるという。

 消費税が上がっただけでなく、中国の消費期限切れ肉問題が発生したこともあり、2014年はハンバーガー界にとって、大変な年だったという。マクドナルドはもちろんのこと、業界全体がダメージを受けて、どの業者も必死だったと小島氏は語る。 「何とかしなければという思いから、新商品の数がかなり増えました。でも、四苦八苦するなかで、新たに気づかされることもありました。たとえば、かっぱえびせんバーガーが発売された今年の1月は、前年同月比で15%も売り上げが上がったんです。どちらかというと弊社はハンバーガーに力を入れてきたこともあり、ついついハンバーガーに目が行きがちなのですが、実はポテトがよく売れたんです。この時、サイドメニューがハンバーガー以上に集客商材になることに気づきまして、今年から、ポテトやドリンクといったメニューにも、今まで以上に力を入れるようにしようと考えています」  近年、某ハンバーガーチェーン店は、消費期限切れ肉問題発生後、急激に売り上げを落とし、流出したお客も多いはずだ。ロッテリアとしては、何かしらの対策を用意しているのだろうか? 「調査したところ、離れたお客は、コンビニやカフェチェーンに多く流れているようです。たしかにこれは、チャンスかもしれませんね。しかし、我々が考えた秘策は『自分らしさ・原点に戻る』ことです(笑)。我々には、他社さんの真似事はできません。これからも、今のお客を大切に450という店舗数だからこそできるサービスを考えていくつもりです」  ロッテリアは、これからもブレることなく、我が道を邁進するようだ。ハンバーガー界の冒険野郎の次なるサプライズに期待したい! <文・写真/HBO編集部>