時代とともに変遷したリアルクールジャパン・「缶コーヒー」の歴史

コンビニでも定番の缶コーヒーコーナー

 サードウェーブが話題になったり、コンビニ各社が淹れたてコーヒーに参入したりと、日本人にとっても切っても切れない存在がコーヒー。  5月には、2009年に財政難を理由に脱退していた国際コーヒー機関(ICO)への復帰も決まり、世界第3位のコーヒー輸入・消費国としての国際的な役割もますます増していくことが見込まれている。  そんな日本で独自の文化として缶コーヒーは、働く大人たちにとっては外せないアイテム。全日本コーヒー協会によれば、日本人の缶コーヒー消費量は一週間でおよそ1.84本(2014年)。年間にすると95.68本も飲んでいるという。  缶コーヒーという言葉が日本で初めて登場したのは、1958年に「1959年1月に外山食品が『ダイヤモンド缶入りコーヒー』の発売を予定」という記事が日本食糧新聞に掲載されたのが初めてだという(串間努・久須美雅士 『ザ・飲みモノ大百科』 扶桑社、1998年)。そしていわゆる缶コーヒーの原点を初めて発売したのは上島珈琲本社(現UCC上島珈琲)が1969年に発売したミルク入り缶コーヒー『UCCコーヒー ミルク入り』である。

実は、日本に先駆けてアメリカが研究していた!?

 しかし、実はそれに先駆けること十数年前、1940年代に「缶コーヒー」を研究していた会社があった。それは、アメリカのコカ・コーラ社であった。  コカ・コーラの米国本社は缶コーヒーの研究を進めていたものの、実際に販売に至る決断はしなかったようで、日本コカ・コーラが缶コーヒーの販売に踏み切ろうとしたとき、猛反対をしたという。しかし、日本コカ・コーラは米国本社の反対を押し切り、1975年に「ジョージア」を販売に踏み切ったのである。  1969年のUCCに始まり、1973年のダイドーとポッカ、1975年の日本コカ・コーラの「ジョージア」と各社出揃った缶コーヒーは、自販機の普及で一気に市場を拡大していく。時代は、1974年に戦後初のマイナス成長を記録し、高度成長期が終焉を告げた頃であったが、安定成長の時代とともに缶コーヒーは働く大人の飲料になっていったのだ。

バブル到来とともに品質重視志向に

 缶コーヒー市場の転機は80年代中盤に訪れる。1985年のプラザ合意を機に、円高が急速に進行し、たった1年で1ドルが241円から168円になった時期である。  強い円を象徴するかのように、海外旅行がブームになり、バブル景気が始まったのもこの時期だ。  このバブル突入の時期、1986~1987年にビール系飲料メーカーが缶コーヒー市場に本格参入してきたのだ。これらを迎え撃つ先発の缶コーヒーメーカー各社は豆の品種や製法にこだわるイメージ戦略を打ち出し対抗。バブル期のブランド志向同様、缶コーヒーにも味と品質が要求されるようになっていったのである。  この品質追求の一つの到達点が、1994年に発売された「ジョージア」ブランドの「エメラルドマウンテンブレンド」だった。1986年の時点で、後発ながらも缶コーヒートップシェアを確立していた「ジョージア」が、コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)の熟練した品質専門管理者が選別し、全体のわずか1~2%しか認定されない稀少高級豆エメラルドマウンテンを使用という謳い文句で発売したのである。この「エメラルドマウンテンブレンド」は、現在に至るまで同ブランドの主力商品になっているほどだ。

不況の時代を支えた缶コーヒーCMのメッセージ

 しかし、順調に拡大してきた缶コーヒー市場も、2000年代に入るとやや翳りが生じ始める。シアトル系カフェなどの上陸や自販機台数の減少、バブル崩壊以降の長引く不況や、雇用不安が社会を覆っていたことが背景にあった。また健康志向の高まりにより、従来のミルク・砂糖入り商品が苦戦したこともあったろう。  こうした状況下に、各社コクや深煎りを重視した無糖・微糖などの商品をリリース。また、CM戦略も疲弊した社会で働くサラリーマンを応援するようなものが増えていく。缶コーヒーシェア第一位だった「ジョージア」の飯島直子さんを起用した「男のやすらぎ」や「明日があるさ」といったキャンペーン、トミー・リー・ジョーンズが地球を調査する宇宙人になって日本の労働者の暮らしに入り込むというシェア第二位の「BOSS」(サントリー食品インターナショナル)のCMなどは記憶に新しいところだ。  オイルショックにバブル景気、バブル崩壊後の不況……。その時代ごとに、社会情勢や個人の嗜好に対応し、変化しながらも常に働く大人とともにあった「缶コーヒー」。  日本発の缶コーヒー登場から46年、さらに現在の日本缶コーヒー市場トップシェアを誇る「ジョージア」は、40年という節目を迎え、缶コーヒー文化の総決算とも言える「ジョージア ザ・プレミアム」を発売する。  市場が成熟し、サードウェーブなど本格ドリップコーヒーなどに人気が集まる中、この先どのような変化を続けるのか? 注視していきたい。 <取材・文/HBO取材班>
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