不調が噂されるユニクロ。このまま転落するのか?

ユニクロ 7月、アパレル業界に衝撃が走った。ユニクロの6月の売上高が前年同月比で11.7%も落ち込んだと発表されたのだ。6月には米カジュアルブランド店GAPの大量閉店も報道されており、同社の収益減少も8%に達している。  こうしたニュースを見ると、一見、ファストファッション全体の落日とも思えてしまうが、「ユニクロに死角なし」と断言するのは、ファッション業界で企業再生を行うコンサルタントの第一人者・河合拓氏だ。 「6月の落ち込みはあくまで天候不順によるスポット的なもの。ファーストリテイリングの強みは2つあります。それはビジネスモデルとベーシックな商品にあります。これら2つの掛け算によって、勝ち組サイクルに入っており、当面、傾くことはないでしょう」  また、ビジネスモデルについては複数の要素が絡み合うと言う。
河合 拓氏

河合 拓氏

「商品原価率を見ればわかりやすいです。百貨店に展開するアパレルブランドの利益率は1~2%と極端に低いのですが、なにしろ家賃が高く商品売上の30%はかかります。一方、ユニクロは大型店舗による販売網のため、家賃比率は5%程度に抑えられるんです」  さらに世界中に展開しているため、商品を製造する量が桁違いに多い。これにより、多大なスケールメリットを得られているという。 「大量生産により、商品の相対価値はユニクロが勝った状態になる。これが重要です。たとえばユニクロの3000円のシャツの原価率は45%と高く、その価値は1350円分といえます。百貨店ブランドの原価率は20%。6000円のシャツを買っても、その価値は1200円分にしかならない。それを消費者も感じているんですね。だから、お客さんは衣料品を買う時に、自然とユニクロと比べてしまいます。ユニクロの価格が業界の基準値になっているわけです」  ベーシックな商品については、いくつも例が浮かぶ。 「みなさんもご存知の通りです。商品はシンプルなものばかりなので、ブームなどの不確実性に流されないという強みもあります」  しかも、ただ安く提供するのではなく、生活を変えてしまう提案をしていると河合氏は強調する。 「たとえばユニクロでカシミヤのセーターを販売しましたよね。昔はカシミヤのセーターといえば高級品で、百貨店で5万円くらいで買って、大事にしすぎて1回着たくらいでタンスにしまっておくものだったんですよ。それをどんどん着るスタイルに変えてしまったのです。あれはファッション業界の人間にとって衝撃的でした。柳井さんは『服は部品だ』と明言しています。もともと、興味はビジネスにあって、商材として服を選んだタイプの経営者。一方、日本のアパレル企業の社長は服が好きで、今年の色や柄といった話題も大好き。発想のスタート地点が違うのでしょうね」  ユニクロは通販事業の強化を発表しており、中国でもオンラインショップを開業。販売網の強化を世界的に進めている。 「現状、ユニクロの商品は相対価値が高いので、黙っていても売れる状態です。究極的には、駅の中にユニクロの自動販売機が置いてあればいい。そんな将来も近いうちに、本当にやってくるかもしれません」  グローバル企業としてファッション界の世界基準を作りつつあるユニクロ。2013年に語られたままになっている世界同一賃金も近い将来実現し、給与の世界基準までも作ってしまうのだろうか。 【河合 拓氏】 ファッション業界で企業再生を行うコンサルタントの第一人者。著作に『ブランドで競争する技術』(ダイヤモンド社)がある